B・C級裁判
日本は1942年8月に連合軍捕虜用の監視員として
朝鮮半島から3,000人を軍属として徴用しました。
当時の新聞の見出しには「米英人俘虜の監視に、
半島青年数千名採用
皇国民の誇り、愈高し」とあります。
連れて行かれた所は、
タイ、マレ-シア、ジャワです。
台湾人(現在の少数民族)軍属も徴用され、
ボルネオ、フィリピンに連れて行かれました。
日本軍はこれら朝鮮人・台湾人軍属を
下働きとして一番いやな仕事をさせました。
多くの忌まわしい事件つまり、
捕虜虐待、虐殺の実行犯として
ほとんど彼等が関係しています。
勿論日本軍の命令でした事です。
戦後のB・C級戦犯裁判では
日本人との見分けが付けにくいこともあって、
多くの朝鮮人・台湾人が
日本兵に代わって死刑や無期懲役等の
重い刑を受けています。
●死刑・無期懲役の人数
| 朝鮮人 | 台湾人 | 日本人 |
死刑 | 23人 | 21人 | 940人 |
無期・有期刑 | 125人 | 147人 | 3,147人 |
戦後、日本国籍を失った朝鮮人・台湾人は
戦犯としての罰は受けながら、
当時の給料や貯金も返して貰えず、
軍属としての年金も、
補償その他の援護法の適用を受けられないまま
日本国家から放り出されたまま現在に至っています。
BC級裁判の記録は中国、ソ連を除いて
原則として公開されています。
しかし日本政府はこれらの資料を
積極的に集めたり公開をしていません。
●A・B・C級戦犯裁判とは
この様な区別の仕方はアメリカの方法です。
イギリスでは主要戦争犯罪(Major War Crimes)と
軽戦争犯罪(Minor War Crimes)の
2つの分け方をしています。
通常はアメリカ方式で分類しています。
◎A級戦争犯罪 平和に対する罪
極東軍事裁判(東京裁判)及び
ニュ-ルンベルグ裁判
東京裁判では 被告28人 死刑7人
◎B級戦争犯罪 通常の戦争犯罪
◎C級戦争犯罪 人道に対する罪
B・C級の裁判は、アメリカ、イギリス、オランダ
オ-ストラリア、フランス、フィリピン、中国国民政府が
40ケ所以上で行なっています。
件数は2,244件、被告は5,700人、死刑は984人です。
●B・C級裁判が行われた場所です。
東京裁判ハンドブック から
注:中華人民共和国とソ連は含まれていません
●B・C級戦犯の国別人数「共和国特赦戦犯始末」任海生編著
華文出版社 再転戴、再編集
連合国が日本軍人をB・C級で裁いた統計です。
中国側資料のため若干数字は異なっている可能性があります。
特に一番下参考の中華人民共和国の数字を見てください。
中国にあれだけの迷惑を掛けたにもかかわらず、死刑と無期が「0」です。
国名 | 裁判期間 | 人数計 | 死刑 | 死刑% | 無期 | 無期% | 有期 | 無罪 | 他 |
アメリカ | 1945.11-1949.9 | 1,453 | 140 | 9.8 | 164 | 11.3 | 872 | 200 | 77 |
イギリス | 1946.12-1948.3 | 988 | 223 | 22.8 | 54 | 5.5 | 502 | 133 | 66 |
オ-ストラリア | 1945.2-1951.4 | 939 | 153 | 16.3 | 38 | 4.0 | 455 | 269 | 24 |
オランダ | 1946.8-1949.1 | 1,038 | 226 | 21.8 | 30 | 2.9 | 713 | 55 | 14 |
中華民国 | 1946.5-1949.1 | 833 | 149 | 16.9 | 83 | 9.4 | 272 | 350 | 29 |
フランス(サイゴン) | 1946.2-1950.3 | 230 | 63 | 27.4 | 23 | 10.0 | 112 | 31 | 1 |
フィリピン | 1947.8-1949.12 | 169 | 17 | 10.1 | 87 | 51.5 | 27 | 11 | 27 |
合計 |
| 5,690 | 971 | 479 | 2,953 | 1,049 | 238 | ||
参考: 中華人民共和国 | 1956.6-7 | 1,062 | 0 | 0 | 0 | 0 | 45 | 1,017 | 0 |
注:上の表で中華人民共和国だけが
別扱いになっているのには理由があります。
周恩来の方針です。
●周恩来の方針
中国は国際法廷には属さず、
独自の軍事法廷で裁く事にしたからです。
従ってA級B級C級と言う区別はありません。
さらに周恩来は下記のように述べています。
「・・・・日本戦犯の処理については、
1人の死刑もあってはならず、
また1人の無期刑もだしてはならない。
有期刑も出来るだけ少数にすべきである。・・・・
また中国国民からの寛大すぎるという抗議に対しては、
「・・・・寛大な処理に付いては、
20年後に理解出来るであろう・・・・
侵略戦争で罪行を犯した人たちが充分に
反省し、その体験を日本の人たちに話す・・・・
日本の人たちもきっと納得する・・・・」
●B・C級裁判をもう少し詳しく国別に見ます。
林博史 BC級戦犯裁判 から
「イギリス」
裁判地 | 被告数 | 死刑 | 死刑確認 | 裁判開始 | 終了 | |
シンガポ-ル | シンガポ-ル | 465 | 142 | 112 | 1946.1.21 | 48.3.12 |
マラヤ | クアラルンプ-ル ジョホ-ルバル マラッカ カジャン タイピン イポ- カンパ-ル テロックアンソン ラウブ ベントン ペナン クアラカンサ-ル アロ-スタ- コタバル | 62 5 11 1 25 2 1 1 1 2 35 3 17 3 | 20 3 2 1
2
1 1 2 21
8 1 | 18 3 2 1
2
1 1 1 20
7 1 | 1946.1.30 1946.8.12 1946.7.5 1946.3.1 1947.9.5 1946.2.18 1946.6.20 1946.6.17 1946.7.18 46.7.15 1946.8.30 1947.8.5 1946.2.11 1946.10.21 | 47.1.12 47.7.12 46.7.6 46.3.6 47.12.19 46.5.2 46.6.21 46.6.18 46.7.18 46.7.16 46.9.28 47.8.9 47.11.16 46.10.31 |
マラヤ合計 | 169 | 62 | 57 |
| ||
北オルネオ | ラブアン ゼッセルトン | 13 16 | 7 8 | 6 4 | 1946.4.8 1946.11.20 | 46.5.24 47.10.8 |
ビルマ | ラング-ン メイミョウ | 120 12 | 38 1 | 22 1 | 1946.3.22 1947.5.12 | 47.11.21 17.11.18 |
香港 | 香港 | 124 | 25 | 20 | 1946.3.28 | 48.12.30 |
合計 | 919 | 281 | 222 |
|
注:裁判はそれぞれの地区で何ヶ所も行われました。
資料によっては、シンガポ-ルの数は1人違っています。
シンガポ-ル裁判には、泰緬鉄道、タイ、
アンダマン・ニコバル諸島、
インドネシア、ニュ-ブリテン島等が含まれます。
「アメリカ」
軍 | 裁判地 | 被告数 | 有罪 | 死刑判決 | 死刑確認 |
陸軍 | 横浜 | 996 | 854 | 124 | 51 |
マニラ | 215 | 195 | 92 | 69 | |
上海 | 75 | 67 | 10 | 6 | |
海軍 | グアム | 123 | 113 | 30 | 10 |
注:米軍資料のため、法務省資料とは異なります
「オーストラリア」
裁判地 | 被告数 | 有罪 | 死刑判決 | 死刑確認 |
モロタイ・アンボン | 148 | 不明 | 不明 | 不明 |
ウエワク | 1 | 不明 | 不明 | 不明 |
ラブアン | 145 | 不明 | 不明 | 不明 |
ラバウル | 390 | 不明 | 不明 | 不明 |
ダ-ウィン | 22 | 不明 | 不明 | 不明 |
シンガポ-ル | 63 | 不明 | 不明 | 不明 |
香港 | 42 | 不明 | 不明 | 不明 |
マヌス | 113 | 不明 | 15 | 5 |
注:有罪は不明となっていますが、
全体では645名が有罪になっています。
「オランダ」
裁判地 | 被告数 | 死刑判決 |
バタビア | 357 | 62 |
メダン | 137 | 24 |
タンジョンピナン | 11 | 1 |
ポルティアナック | 36 | 16 |
バンジェルマシン | 30 | 10 |
バリクパパン | 88 | 18 |
マカッサル | 93 | 32 |
ク-パン | 25 | 6 |
アンボン | 79 | 14 |
メナド | 59 | 28 |
モロタイ | 65 | 8 |
ホ-ランディア | 57 | 9 |
合計 | 1,037 | 228 |
「中華民国」
中国では、1946年2月に
「戦争罪犯処理弁法」など3法令を制定し、
4月から10ケ所で裁判を開きました。
北京・南京・上海・漢口・広東・
瀋陽・太原・徐州・済南・台北
日本側資料では883人が裁かれ、
504人が有罪(内死刑149人)となっています。
2000年5月17日、
衆議院で「在日軍人・軍属給付金法案」が可決されました。
在日に限る事と、弔意金としての一時金数百万ですから、
同じ日本軍人として働きながら、
日本軍人に対する恩給と比べると極端に少ないのですが、
従来の日本から見ればいくらかの進歩かもしれません?
◎日本軍人の重度戦病者の場合は階級によって
169万円から1,000万円が毎年支払われ、
合計で4,800万円から
1億3,400万円受取っている人があり、
国籍がない人とは大きな差別といえます。
◎日本人に対する軍人恩給は
現在も支給が続いており、
総額40兆円にもなっています。
侵略した加害の先兵の軍人に対して
恩給を支給して靖国神社にまつり、
被害を与えたアジアの人々や
日本人(原爆を除いて)には何の補償もしていないのです。
◎外国(22ケ国)に対する賠償や
対外資産喪失の合計は約1兆円に過ぎません。
日本に住んでいない場合はどうなのかというと、
旧日本軍の上等兵として働いた金成寿さんの
恩給に関する裁判では、
2004年4月27日、東京高等裁判所は却下しています。
◎国籍によって色々の補償は支給されないのですが、
さらに割り切れない事があります。
戦犯として拘置されていた
29名の朝鮮人と1名の台湾人です。
彼らは1952年に「日本国籍を失ったのだから
日本人ではない」と釈放する事を請求しました。
しかし最高裁は
「戦犯として刑を科せられた当時は日本人だった。」
と却下しました。
つまり今は日本人ではないから
補償は受けられないが、
当時は日本人だったから刑罰は受けろ、
とうことです。