華北占領地区の阿片政策
1937年12月14日、
日本軍によって中華民国臨時政府が北京に作られました。
王克敏を行政委員長とする傀儡政権でした。
(注:その後、1938年3月28日に
梁鴻志を行政院長とする中華民国維新政府を南京に作った)
1938年6月1日、
北京の臨時政府は阿片について次のような政策を発表しました。
1. 市内アヘン吸引所 140~150ケ所、旅館、娼窟等に対し、
営業としてアヘン吸引を許可する。
2.出願者には登記料を課す
3.無許可者が他人に吸引させた場合には30~150元の罰金を課す
5.煙館一戸にたいして1ケ月10元の燈損(営業税)を課す
6.吸引者には期限戒煙執照(期限付の吸煙許可証)を下付し、
手数料1円を徴収する
中国各地どこでもそうでしたが、
表面上は登録制や専売制を採用し、
徐々に阿片を撲滅していく政策でした。
それ以外は密売で、いわゆる裏社会が扱い、
厳しい取締りの対象になるはずでした。
しかし実はその裏社会にも国が関与していたのです。
●華北に於ける麻薬秘密社会の実体
在北京大使館 嘱託 渡辺寅三郎調べ (原文カナ)
華北に於ける麻薬(ヘロイン)の秘密組織は
勿論単一な組織体ではなく、
各種各様の秘密組織が渾然と集まって
複雑隠秘な秘密社会を構成している。
この秘密組織を人的構成の点から見ると
朝鮮人を主体に中国人、内地人等、
約1万5~6千戸、6万人内外の家族を内包しており、
地域的に之を見れば
国内的には密業中心都市として
京津(注:北京と天津)を中心に
華北の治安地区全面(相当範囲の敵地区又は匪賊地帯も)、
国際的には蒙彊、満州(及び華中、華南)の
全面にわたって秘密細胞を拡げ、
機能的には京津両市の密売組織及び
この組織と華北全面の小売網とをつなぐ密輸輸送組織、
京津両市と蒙彊、満州、華中、華南を結ぶ密輸組織、
原料薬品の密売、密輸組織等より構成されたる総合体で、
この内輸送組織は主として
麻薬業者と国策輸送機関(陸、空、海)内の日華従業員
或いは特殊機関関係員等の包合組織となっており
秘密組織の職種は更に検察機関の中にさえ恐るべき毒糸を伸ばしている。
この報告書で分かるように、
実際には国の特務機関が裏社会に関係していました。
というより実質的に取り仕切っていました。
勿論国や特務機関が直接手を出したわけではなく、
軍から依頼を受けた民間人の里見が
中国中の阿片の元締めとしてで動いたのです。
つぎにその事を書きます。