糖尿病については殆どの人が
熟知していますので必要な点のみに絞ります。
糖尿病は食事などで吸収した糖分の
代謝がうまくいかなくなった病気です。
糖分の代謝には私たちの膵臓から分泌される
いくつかのホルモンの内
インシュリンが関係しています。
糖尿病はⅠ型、Ⅱ型、に分類されますが、
いずれにしてもインシュリンが膵臓から出ないか、
出ても足りないために起こります。
インシュリンは糖分の代謝だけではなく、
蛋白質や脂肪の代謝にも影響しています。
インシュリンの代わりになるような
ホルモンや薬はありませんので、
薬よりも基本的にはインシュリンを
補充することが大事なことだと思われます。
2008年度の特定健診基準では
腹囲やBMIと言った内臓脂肪蓄積の
リスクを優先にしています。
まずそこで引っかかった人が
コレステロ-ルや中性脂肪や肪血糖値などの
数値が点数で加算されるようになっています。
そうすると痩形でスマ-トな人は
少し位血糖が高くても
引っかからない可能性があります。
最近糖尿病の検査であまり耳慣れない
「HbA1c」と言う検査があります。
グリコヘモグロビンA1cといいます。
赤血球中のヘモグロビンと
血中のブドウ糖が結合したもので
糖化ヘモグロビンともいいます。
グリコヘモグロビンは一度出来ると
赤血球が壊れるまでなくなりません。
赤血球は3ケ月ごとに作り直されるので、
過去3ケ月の平均血糖が分かるということです。
つまり検査の前1週間努力してごまかしても
HbA1cで過去のことが分かってしまうのです。
ヘモグロビン全体のうちどのくらいが
グリコヘモグロビンかその割合で表示します。
6.5%未満が良いとされています。
メタボ健診では保健指導判定値5.2%、
受診指導判定値6.1%と、
国際基準から見てもかなり厳しい基準です。
最新の国民健康調査から見てみます。
● メタボ健診のHbA1c基準は
5.2以上は保健指導判定値(アドバイスを受けなさい)
6.1以上は受診指導判定値(病院に行きなさい)
● 平成24年国民健康・栄養調査報告から
厚生労働省 平成26年3月発表
40歳以上の保健指導判定値の5.1から6.5までを
男女別に整理しました。
血糖を下げる薬を飲んでいない人のデータ-です。
飲んでいる人を含めると各々若干低くなります。(当然です)
保健指導判定値(アドバイスを受けなさい)の
5.2から6.0までの合計を表の一番下に書きました。
注:厚生労働省の統計では5.2だけではなく
5.1~5.2となっていますので、
止むを得ず5.3~6.0までの合計を書きました。
注:男女とも一番したの5.3~6.0の合計を見てください。
半数以上の人が保健指導判定値
(アドバイスを受けなさい)となってしまいます。
おそらく医療機関に行けば治療されるでしょう。
半分以上が引っかかる。
これは基準がおかしい証拠です。
男性
HbA1c | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 |
5.1~5.2 | 13.8% | 10.1% | 8.6% | 6.7% |
5.3 | 11.5% | 9.7% | 6.8% | 6.8% |
5.4 | 16.1% | 9.0% | 8.1% | 7.5% |
5.5 | 12.5% | 11.8% | 10.3% | 8.8% |
5.6 | 10.4% | 11.7% | 10.5% | 11.2% |
5.7 | 6.0% | 8.5% | 9.2% | 10.1% |
5.8 | 6.5% | 9.0% | 8.5% | 8.6% |
5.9 | 2.2% | 4.4% | 7.1% | 8.3% |
6.0 | 4.5% | 4.0% | 6.0% | 6.2% |
6.1~6.2 | 2.8% | 4.8% | 7.4% | 8.8% |
6.3~6.4 | 0.6% | 2.7% | 4.4% | 5.1% |
6.5 | 0.4% | 1.3% | 1.8% | 1.7% |
合計5.3~6.0 | 69.7 | 68.1 | 66.5 | 67.5 |
女性
HbA1c | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 |
5.1~5.2 | 15.8% | 9.3% | 5.0% | 5.1% |
5.3 | 11.7% | 8.5% | 5.6% | 5.3% |
5.4 | 12.4% | 11.0% | 9.0% | 7.7% |
5.5 | 12.1% | 12.3% | 9.6% | 10.1% |
5.6 | 10.8% | 12.6% | 11.8% | 10.5% |
5.7 | 8.1% | 10.6% | 12.3% | 9.9% |
5.8 | 6.4% | 9.4% | 12.0% | 11.1% |
5.9 | 4.7% | 8.3% | 8.3% | 9.5% |
6.0 | 2.8% | 4.9% | 7.2% | 7.5% |
6.1~6.2 | 2.5% | 5.1% | 8.1% | 9.7% |
6.3~6.4 | 0.6% | 2.0% | 3.7% | 4.6% |
6.5 | 0.4% | 0.7% | 1.1% | 1.8% |
合計5.3~6.0 | 69.0% | 77.6% | 75.8% | 71.6% |
さて糖尿病患者の治療で血糖値を
どの位にコントロ-ルしたいのか
色々な基準があります。
● HbA1cのコントロ-ル2つの目標値
指標 | 優 | 良 | 不十分 | 不良 | 不可 |
日本糖尿病学会 | 5.8未満 | 5.8~6.5未満 | 6.5~7.0未満 | 7.0~8.0未満 | 8.0以上 |
国際標準値 | 6.2未満 | 6.2~6.9未満 | 6.9~7.4未満 | 7.4~8.4未満 | 8.4以上 |
この目標値では 日本糖尿病学会は6.5未満が良
国際標準値は6.9未満が良
メタボ検診の数値とは明らかに矛盾する数値です。
しかも日本の基準は国際標準値より厳しいことがわかります。
さてHbA1cでは最近注目すべき研究が発表されました。
● ACCORD試験 米国立衛生研究所の下部組織の研究
2型糖尿病患者で血管疾患リスクの高い
患者約1万人を2群に分けて調査
患者の内容
平均年齢 62歳
平均病歴 10年
平均HbA1c 8.2%
心血管疾患既往 35%
高リスク患者 65%
標準治療群(治療目標を緩くした、のんびり治療)
HbA1cを7.0~7.9にすることを目標にした。
集中治療群(治療目標を厳しくした厳格治療)
HbA1cを6.0未満にすることを目標にした。
2001年に調査開始、
2009年に終了の予定が2008年2月6日中止
2010年に結果報告が発表された
| 標準治療群 | 集中治療群 |
患者数 | 5,123 | 5,128 |
HbA1c の目標 | 7.0~7.9% | 6%未満 |
治療結果 | 7.5% | 6.4% |
死亡数(平均4年間追跡) | 203人 | 257人 |
死亡率(1000人/年当り) | 11人 | 14人 |
注:厳格に治療したほうが3年半で
死亡数が26.5%も増えてしまったのです。
この結果で調査は中止されました。
血糖値をあまり無理して下げようとすると
薬も増え副作用も出ます。
むしろ穏やかに治療したほうが
安全なことが証明されてしまったのです。