次に薬が他の場所にも影響する具体例を
2つ書きますが、まず糖尿病です。
「糖尿病の薬 SGLT-2型阻害剤」
☆仕組み
2014年に今までにない糖尿病の
治療薬が発売されました。
血中のグルコ-ス(糖分)を腎臓で
血液から尿側に排泄させる薬です。
つまり血液から糖分を取って、
尿として排泄させるのです。
結果として血液の血糖値が下がります。
SGLT-2型阻害剤
(Sodium Glucose cotransporter阻害剤)といい、
商品名はスーグラ、アプルウェイ、
フォーシ-ガ-、ルセフィ、カナグル等が有名です。
腎臓では1日200リットル前後の尿を作ります。
しかしそんなに尿と血中成分が出ると
大変なことになるので、
必要なものは尿細管で再吸収しています。
その色々な物質を再吸収する中で
グルコ-ス(糖分)を再吸収する仕組みを
SGLTといいます。
そこでSGLTの働きを妨害して
グルコ-スを再吸収させないで尿として排出させれば
血中のブドウ糖は減ることになります。
仕組みはナトリウムの濃度勾配を駆動力として、
グルコ-スを細胞内へ能動輸送トランスポ-タ-
(運び屋)する働きを阻害することによって
グルコ-スを細胞に取り込まないで
尿に排出させる理屈です。
画期的な治療薬としてテレビにも
取り上げられましたが問題が多い薬です。
☆問題
一見血中のグルコ-スを減らせば
糖尿病が治るような錯覚を持ちます。
しかし単に血中から抜くだけで、
生体内にあちこちに溜まった糖分や、
糖尿病の諸症状を治すわけではありません。
血液検査のときだけ良い結果が出るだけです。
☆SGLTの種類と作用する場所
グルコ-ス(ブドウ糖)を細胞内に吸収させるSGLTには
2種類あって、SGLT-1は主として消化管にありますが、
それ以外に肝臓、肺、心臓、脳、脊髄など全身に存在します。
また SGLT-2は主として腎近位尿細管に存在しますが、
精巣、能動脈、小脳、甲状腺、肝臓にも存在します。
そして1型と2型は別なように見えて、
2型に対する阻害剤が1型にも影響を
与えていることが分かってきています。
☆副作用 1
SGLT-2型が全身の色々な場所にあることは、
阻害剤は目的の血糖値を下げるだけではなく
全身に影響を与えるということが分かります。
これが副作用の原因にもなることが考えられます。
☆副作用 2
血中から糖分を取るのですが、
取った糖分はどこへ行くのでしょうか?
糖分は高濃度の尿として膀胱で蓄積され排出されます。
特に高齢者の場合は排尿機能が少し弱くなっていますので、
尿路系統に高い糖分が蓄積された結果、
膀胱など尿路性器感染になりやすくなります。
尿路系感染を起すと更に抗生物質の投与が必要になります。