「基本的な免疫の仕組み」
免疫は学問的にはとても難しい内容です。
しかし大事なことですので簡単に分かりやすく説明します。
免疫は書いて字の通り「疫病」を免れる仕組みです。
疫病と言えば昔から感染症の事を言います。
そして感染症とは微生物が身体に侵入して悪さをすることです。
つまり免疫とは、ウイルス、細菌、カビなどの微生物から
身体を守る仕組みのことです。
「微生物は蛋白質で出来ている」
身体に侵入する微生物は生物ですからすべて蛋白質で出来ています。
動物だけではなく植物でも蛋白質です。
自分以外の蛋白質つまり微生物は身体にとって異物です。
ですから私たちは自分以外の蛋白質を異物として認識し、
それが入れば感染を意味するのです。
そこで免疫は自分以外の蛋白質を拒否することになります。
つまり免疫は自分以外の蛋白質を拒否する仕組みです。
自己と非自己の識別といいます。
「何故、蛋白質を食べても拒否しないのか?」
自分以外の蛋白質を身体に入れる事を拒否すると書きました。
まず身体の中と外について考えます。
私たちはつい胃とか腸を身体の中と考えてしまいます。
しかし考えてみれば、口、食道、胃、小腸、大腸、肛門は
一本の管ですからまだ身体の外なのです。
ですから身体の中に入るという事は
腸から吸収された後という事になります。
栄養として身体に入れるためには、
口から入った蛋白質は殺菌(胃)、消化(腸)の過程でバラバラにされます。
バラバラにする、つまり蛋白質ではない状態にするのです。
蛋白質はアミノ酸がつながって出来ています。
蛋白質をアミノ酸までにバラバラにすれば
単に原料で蛋白質ではないので、
安心して私たちは腸から吸収することが出来るのです。
蛋白質→アミノ酸、この過程は大事な消化の一つです。
腸まで来た時にまだ蛋白質の成分が残っていれば、
私たちは免疫反応で拒否して下痢で排除します。
この事を消化不良の下痢と言います。
免疫には難しい言葉が沢山使われますが、
免疫学の勉強をしているのではないのでなるべく簡単な言い方をします。
「自然免疫」
身体の中での免疫の働きの以前に、
生まれた時から自然に備わっている身体の防御システムです。
この物理的・化学的バリアを自然免疫と言います。
下の図にもありますがありとあらゆるところで
異物が身体に侵入するのを防いでいます。
その防御を突破された時に改めて身体は体内の免疫機構を作動させます。
◎リゾチ-ムは細菌の細胞膜を消化する酵素で、粘液や涙の中に存在する
◎粘液はかなり酸性で長い糖鎖分子からなり微生物にべったり付く
◎気管支などの呼吸器では繊毛を振動させて
粘液と一緒に微生物を肺から追い出す
◎咳やくしゃみも異物を追い出す仕組み
◎その他、嘔吐や下痢も異物を排除する
自然免疫は年齢と共に劣化します。
これらを総称して自然免疫と言いますが、
そこを突破して侵入した場合免疫反応が起きます。
「自然免疫の一例」
呼吸で身体に入った微粒子がすべて悪影響を与えるとしたら大変な事です。
人類、動物はとっくに絶滅しているでしょう。
タバコを吸っている人等とっくに死亡しているでしょう。
身体に入った微粒子は自然免疫でほとんど排泄されます。
考えてみれば地球の歴史の中で
多くの変化を乗り越えてきたのですから
呼吸器官や肺は非常に丈夫な組織です。
ですから健康な人は排出できますが、
排出機能が低下しているお年寄りや呼吸器官の弱い人、
特に子どもなどは気をつけたほうが良いと思います。
☆気道の下部分、下気道の模式図です。
気管の最初は太い気管です。
気管から順番に細かく分かれて気管支になり、
更に細かく分かれて肺胞嚢になります。
吸込んだ空気は気管から23段階で肺胞に到達します。
実際には16段階目からガス交換機能(酸素と二酸化炭素交換)はあるようです。
「異物排除の仕組」
図の左から空気の流れとなっていて、
細菌、ウイルス、異物などが呼吸と共に侵入します。
それをベタベタの粘液が絡め取って口のほうに排除する仕組みです。
粘液板と書いてあるのは粘液の層です。
粘液の層の下に繊毛があります。
繊毛は下の繊毛上皮細胞から生えています。
繊毛上皮細胞から1個当たり200~250本の繊毛が生えていて、
1秒間に13回、口の方に向かって振動しています。
その振動で粘液を口に出しているのです。
これが気管支粘膜が痰と異物を排除する仕組みです。
私たちはあまり意識していませんが
通常1日に100ミリリットル前後出ています。
しかも24時間稼動の休みなしです。
図の説明を続けます。
粘液は所々にある杯細胞で絶えず作っています。
そして通常と異なる異物が入ってきたとき、大きい物を飲み込んだり、
食道に入る物を誤飲したり、PM2.5のような微粒子・・・・等は
せきとして排除しなければ間に合いません。
そこで迷走神経の先端の咳嗽受容体(咳をする神系)に
これらの異物が触れたときに咳をして排除します。
加齢や喘息で呼吸系にトラブルがあると繊毛の数が少なくなり、
動きが弱くなって異物を排除する機能が下がります。
この粘液板の仕組みは気管支の3段階目まで沢山あり、
4段階目以降は少なくなりますので、
小さくて異物と判断されにくい物は通過する可能性もあります。