海水中に原発から放出された膨大なエネルギ-は海水温度を上昇させています。
2つの新聞記事を転載します。
●テ-マ 泊原発地元「排水、生態系壊した」34年間海水温測定 漁獲量も激減
東京新聞 2012年5月4日
国内の原発でただ1基運転中で、5日に停止する北海道電力泊原発3号機(北海道泊)。
そこから5キロほど離れた岩内町の学習塾経営、斉藤武一さん(59)は原発から流れ出る温排水を監視しようと、
1978年から34年間、ほぼ毎日、近くの波止場で海水の温度を測り続けてきた。
長年積み上げたデ-タを基に「原発は環境破壊につながる」。
原発ゼロには「まだスタ-ト地点」と表情を緩めない。
海の向こうに泊原発を望む岩内港。
斉藤さんは波止場からロ-プでバケツをつるし、慣れた手つきで海水をくみ上げ、温度計を確認した。
「年間の平均水温は、自然変動を差し引いても、30年で0.3度上がった」
岩内港を代表する海産物、スケトウダラの漁獲量は今や最盛期の1割以下に。
漁業の衰退で、町の人口も1万4千人余りとピ-ク時の6割ほどに減った。
「原発の排水が魚場の生態系に悪影響を与えた。岩内を壊した」と言い切る。
斉藤さんが原発に疑問を持ったのは大学時代。
本で読んだ「原発は産業を奪い、地域を壊す」との言葉に衝撃を受けた。
そのころ、泊村で原発の誘致が進んでいた。
大学を中退して岩内町に戻った後、海水温の測定を始めた。
原発による環境破壊を「素人なりの方法で証明しよう」と考えた。
当時は公立保育所に勤めながら、測定を続けた。
上司からは「公務員らしくしろ」と叱られた。
「防波堤では後ろに気をつけろ」と嫌がらせのはがきも届いた。
転機は、昨年3月の東京電力福島第一原発の事故直後。「原発に対する国民の意識が根底から変わった」
この1年余りに道内で91回の講演に招かれ、計1万人以上に海水温の話をした。
近所のス-パ-でも町民から「がんばってるね」と声をかけられ、
今まで見向きもされなかった活動が共感を得ているとの手ごたえを感じる。
以下省略
●テーマ「帰ってきた本来の海」玄海原発停止 温排水減り
東京新聞 2014年3月11日
運転停止が続く九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)のそばの海域で生態系が変化している。
独自に潜水調査した地元のダイバ-が明らかにした。
キビナゴやギンガメアジなど南方系の魚がいなくなり、
稼働時には見られなかったコンブ科の海藻が育っているという。
研究者は「原発からの温排水による海水温の上昇が止まり、本来の生物が戻ってきた」とみる。
調査したのは佐賀県唐津市のダイビングショップ経営浪口志郎さん(67)。
2月26日、1,2号機の放水口から沖に5メ-トルの海中をビデオ撮影。
原発が4基とも稼働していた2006年の同じ日に同じ場所で撮影した映像と比較した。
8年前はむき出しだった岩肌には、南方系の魚が好んで食べていた海藻が育ち、海底にはナマコや
アワビ、サザエも。泳ぐ魚はメジナやクロダイのど周辺の海域とほぼ同じだった。
九電によるとタービンを回す蒸気の冷却に海水を使い、最大7度上昇した水を海に戻す。
原発稼働時の温排水放出量は1,2号機で毎秒74トン、3,4号機は同164トン。
原発停止中も使用済み核燃料を冷却させるが、温排水量は少なく、温度も海水とほぼ変わらない。
京都大学舞鶴水産実験所長の益田玲爾准教授(魚類心理学)は「原発稼働時、近くの海水は周辺より約2度高い。
関西電力高浜原発(福井県)のそばに潜っても、南方系の毒ウニが死滅し、特産のムラサキウニが増えていた」と話す。