本土決戦の計画についてはよく語られています。
沖縄戦は本土決戦準備のためだったことは
前項目に書きました。
しかし実際にそのことを示した公文書はあまりありません。
次は1989年、アメリカ・メリ-ランド大学で
たまたま発見されたものです。
季刊戦争責任資料第26号の吉田裕一橋大学教授の論文を
参考にします。(原文カナ、漢字を少し直しました)
●秘 国土決戦教科令
昭和20年4月20日
大本営陸軍部
第1章 要旨
第1.国土決戦の目的は来冠する敵に
決戦を強要して絶対必勝し皇国の悠久を確保するに在り
これが為国土作戦軍は有形無形の最大戦力を傾倒し
猛烈果敢なる攻勢により敵上陸軍を殲滅すべし
第2.国土における決戦作戦の成否は皇国の興廃に関す
仰いで国体の無窮を念ひ俯して
建軍の本義に稽へ挙軍一心匪窮の節を致して
一死君国に報い絶倫の努力を傾倒して
作戦目的の必成を期すべし
第3.略
第4.神州は磐石不滅なり 皇軍は自存自衛の正義に戦う
即ち将兵は皇軍の絶対必勝を確信し
渾身の努力を傾倒して無窮の皇国を護持すべし 以下略
第5 戦場は悠久の皇土なり此処に父祖伝承して俱に生を享け民族永劫の生命と共に存すべき地なり
第6、第7 省略
第2章 将兵の覚悟及び戦闘守則
第8.国土決戦に参ずる全将兵の覚悟は
各々身をもって大君の御盾となりて
来冠する敵を殲滅し万死固より帰するが如く七生報国の念願を深くして
無窮なる皇国の礎石たり得るを悦ぶべし
第9、第10、省略
第11.決戦間傷病者は後送せざるを本旨とす
負傷者に対する最大の戦友道は
速やかに敵を撃滅するに在るを命肝し
敵撃滅の一途に邁進するを要す
戦友の看護、附添は之を認めず
戦闘間衛生部員は第一線に進出して治療に任ずべし
第12.戦闘中の部隊の後退は之を許さず
斥 候、伝令、挺身攻撃部隊の目的達成後の
原隊復帰のみ後方に向かう行進を許す
第13.作戦軍は全部隊、全兵悉く戦闘部隊なり
後方、補給、衛生勤務等に任ずる部隊も
常に戦闘を準備し命に応じ第一線に進出、
突撃に参加すべきものとす
徒手の将兵は第一線戦死者又は
敵の銃器を執り戦闘を遂行すべし
第14.敵は住民、婦女、老幼を先頭に立てて
前進し我が戦意の消耗を計ることあるべし、
かかる場合我が同胞は己が生命の長きを
希はんよりは皇国の戦捷を祈念しあるを信じ
敵兵撃滅に躊躇すべからず
注:敵の前にいる同胞は躊躇しないで殺せという命令です
第15.敵は住民を殺戮し、住民地、山野に放火し
或いは悪宣伝を行う等惨虐の行為を行うべし
将兵は常に敵愾心を高揚し烈々たる闘魂を発揮し断じて撃たずば止むべからず
以下省略
この本土決戦の教令はかなり無茶なものです。
この内容で沖縄戦を迎えた日本軍は沖縄住民を盾として
前面に押し出して米軍と戦ったのでしょう。
また第14にあるように米軍の前を歩く沖縄人は殺害されました。
このことはいち早く米軍の捕虜になって
安心した沖縄人が日本軍に投降を進めに来た場合、
第14に従って殺害されたのです。
沖縄の悲劇はこの国土決戦教令にも原因があるようです。