韓国では1996年、39団体と19人の国会議員が中心となって
「強制連行された日本軍従軍慰安婦問題解決のための市民連帯」が
大募金運動を始めました。
その後1997年1月11日にアジア女性基金の金平輝子理事長の代表団が
償い金や総理からの手紙を7人の元慰安婦に渡しました。
しかしアジア女性基金が抜き打ちに支給したために問題がこじれ、
女性基金の活動をしていた臼杵敬子氏を入国禁止とし、
更に1998年2月6日、
韓国の被害者や市民団体、韓国政府への事前の了解もなく、
日本が韓国の新聞に「償い金」支給の全面広告を出した事から
猛反発を受けました。
●韓国における事業実施に関する新聞広告文
ハンギョレ新聞、韓国日報など4紙 1998年2月6日
「基金事業の概要説明」
女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)は、
先の戦争において、「従軍慰安婦」とされて名誉と尊厳を傷つけられ、
心身にわたり癒しがたい傷を負われた方々に対するお詫び深い反省に立脚して、
1995年7月、日本政府と国民の協力により発足しました。・・・・
このような考え方に共鳴する多数の日本国民から、
これまで4億8千万円の募金が真心のこもったメッセ-ジとともに
アジア女性基金に寄せられています。
また、日本政府は、アジア女性基金の活動を財政面を含め、
全面的に支援するとともに、基金の事業が行われる折り、
日本政府を代表しこの問題に関して改めてお詫びの気持ちを表す
内閣総理大臣の手紙を元慰安婦の方々お一人お一人にお届けしています。
アジア女性基金は、発足以来、元慰安婦の方々や関係者の方々との対話を積み重ね、
これまでに、韓国、フィリピン等において全体で総計100名を超える申し込みがあり、
50名余りの元慰安婦の方々に基金の事業を受け入れて頂いております。
しかし、残念なことに、本基金の事業について、未だにさまざまな誤解や憶測があり、
十分に理解されていないのも事実です。
今回、先ずもって本基金設立の趣旨や事業の内容を
皆様に正確に知っていただくことが重要と考え、
この広告を出しました。
以下略
女性のためのアジア平和国民基金理事長
原文兵衛(元参議院議長)
「従軍慰安婦にされた方々にお届けするもの」
1 日本国内閣総理大臣の手紙
日本国民の償いの気持ちを表す「償い金」をお渡しする際に、
日本政府を代表して、
改めてお詫びと反省の気持ちを表す内閣総理大臣の手紙が届けられます。
2 償い金
日本国民の償いの気持ちを表すものとして、
日本国民からの募金を原資に元慰安婦の方々に
1人当たり200万円を「償い金」としてお渡しします。
3 医療・福祉支援事業
日本政府が道義的責任を誠実に果たすため、政府からの拠出により、
元慰安婦の方々が利用される財・サ-ビスを提供します。
具体的には、住宅改善、介護サ-ビス、医療・医薬品補助等、
ご本人のおかれた実情とお気持ちに沿って実施されます。
この事業は、元慰安婦の方々に1人当たり、
初年度に228万円、2年度から5年度に各18万円、
合計5年間で300万円規模で実施されます。
4 その他
以上に加え、「償い金」をお届けする際、
アジア女性基金への募金とともに寄せられた日本国民のメッセ-ジ、
そして、日本国民の償いの気持ちと「基金」事業の趣旨を明らかにした
原文兵衛理事長の手紙をお届けします。
この新聞広告への反発から、NGO「韓国挺身隊問題対策協議会」が中心となり
反対運動や調査活動をリ-ドしました。
同時に「女性基金」に反対して募金運動が始まりました。
そして1998年3月に金大中政権が誕生し、
5月に「韓国政府として日本政府に国家補償を要求することはしない」
「その代わりアジア女性基金からのお金は受け取らない」と発表しました。
「アジア女性基金からは受け取らないと誓約する元慰安婦142名には
生活支援金3150万ウォン(310万円)と
韓国挺身隊問題対策協議会が集めた418万ウォンを支給することになりました。
当初基金からお金を受け取った7名と誓約しなかった4名には支給されませんでした。
2004年までに韓国政府は207人の慰安婦を認定しました。
結局韓国政府は基金を受け取らない事を条件に
一人当たり約300万円の一時金と毎月5万円の生活支援金の支給を開始したのです。
事実上基金は凍結され、1999年アジア女性基金の事業は終了しました。
詳しい結果報告は出されていませんが、
2014年12月現在韓国政府に登録された
元慰安婦の総数は237人、生存者は55人、
日本からの「償い金」と「書簡」を受け取った人は60人とのことです。