厚生労働省が日本人の食事摂取基準報告書の
2015年版でコレステロ-ルの摂取制限を
撤廃しました。
要点は
◎体内のコレステロ-ルは肝臓で
自動的にコントロ-ルされている
◎コレステロ-ル摂取量が
血中コレステロ-ルに反映されるわけではない
◎1日に卵を2個以上摂取しても
病気や死亡率に関係ない
◎冠動脈疾患や脳卒中との関連も認められない
◎糖尿病患者に関しても
病気のリスクとの関連は認められない
◎家族的に高いコレステロ-ルは
遺伝性の原因である
さらにこの報告書では何ヶ所も
高齢者の栄養不足について
「特に高齢者において低栄養を生じる可能性が
あるので注意が必要である」と述べています。
この発表で従来の常識が覆ったようです。
卵(鶏卵)2個以上食べてよいといっても、
20個も30個も食べる人はいないでしょう。
これは常識的な判断です。
このシリ-ズでは、
何度もコレステロ-ルの重要性を書き、
またコレステロ-ルは高めが良いと書いてきました。
やっとこのことが裏づけされたような気がします。
高齢者ではむしろ高めのほうが安全です。
日本人間ドック学会では
高齢者の総コレステロ-ルは
「280」までOKとしているくらいです。
現在の「225」では低すぎるのです。
総死亡率や発ガンリスクで
一番低いのは「240~260」です。
コレステロ-ルはホルモン原料になるので、
あまり低すぎるとホルモン量が低下し
免疫力が弱まるといわれています。
最近女子マラソンの選手に
骨折が多いとの報道がありました。
これはトレ-ニングでコレステロ-ルが低下し、
ホルモン低下、閉経、骨粗しょう症になったと思われます。
また若い女性で美を追求するあまり
劇やせするとやはりコレステロールが低下し
妊娠に不利になりますし、
栄養不足で育った胎児は
反動で栄養を摂取する機能が発達し、
将来成人病になる可能性も指摘されています。
これから問題になる認知症の多発にも
コレステロ-ルは関係します。
認知症については次の機会に書きますが、
認知症の分類で日本人の場合一番多いのが
脳血管に由来する認知症です。
脳神経や血管にコレステロ-ルの低下が
影響を与えているのかもしれませんし、
日本で行われた大規模調査(1995年の福岡・久山町調査)では
高いコレステロ-ルが認知症の
危険度が低くなる傾向が現れていますし、
低コレステロ-ルで育った子供が
将来認知症になる率が高くなる調査もあります。
現に認知症の高齢者に低コレステロ-ルが
多くなっている傾向があります。
厚生労働省が高齢者の栄養不足を
懸念するのはこのあたりかもしれません。
やはり数値にこだわってあまり
無理な治療をするよりも、
十分な栄養と適度な運動が必要なことと思われます。