原子力を始めとして石炭・石油・ガス等は資源が限られています。
原子力の場合ウランを燃やして廃棄物からプルトニウムを取り出し
それを増殖しながらエネルギ-を作れば
永久に利用できるといわれますがどうも実現できないようです。
また核の融合からエネルギ-を得る研究もされていますがこれも実現出来そうにありません。
そこで注目されているのが再生可能エネルギ-です。
地下資源を使わないで再生でエネルギ-を得る方法です。
化学的に液体燃料からエネルギ-を取り出すことも研究は進んできましたが、
通常は太陽光・風力・地熱・水力・バイオマス・・・の事を言います。
今までの発電と違って設備の新規投資や発電効率の低いものもありますので
費用が高くつく場合もあります。
しかし将来のことを考えると再生可能エネルギ-を普及させる必要があります。
そのために考えられたのが買い取り制度です。
まず現状での再生可能エネルギ-に関する統計をいくつか掲載します。
●主要国の発電電力量の電源構成 2012年
JEPIC 一般社団法人海外電力調査会資料から
出典 OECD/IEA
注:2012年と少し古くなるかもしれませんが参考です。
| 石油 | 石炭 | ガス | 原子力 | 水力 | その他 |
カナダ | 1.1 | 10.0 | 10.7 | 15.0 | 59.0 | 3.5 |
米国 | 0.8 | 38.5 | 29.6 | 18.8 | 7.4 | 5.1 |
フランス | 0.8 | 3.9 | 3.9 | 76.1 | 8.1 | 4.0 |
ドイツ | 1.2 | 46.1 | 12.5 | 16.0 | 2.9 | 19.1 |
イタリア | 6.4 | 18.2 | 43.4 | | 15.2 | 13.4 |
英国 | 0.9 | 40.0 | 27.7 | 19.5 | 1.6 | 8.3 |
スペイン | 5.2 | 19.1 | 24.9 | 20.9 | 10.6 | 19.6 |
スウェ-デン | 0.4 | 0.8 | 0.5 | 38.5 | 44.2 | 12.7 |
ロシア | 2.6 | 15.8 | 49.1 | 16.6 | 15.7 | 0.4 |
インド | 2.0 | 71.1 | 8.3 | 2.9 | 12.4 | 5.0 |
中国 | 0.1 | 75.9 | 1.7 | 2.0 | 14.8 | 2.4 |
韓国 | 4.0 | 45.1 | 21.1 | 28.3 | 0.9 | 0.6 |
日本 | 17.7 | 29.6 | 38.7 | 1.6 | 8.0 | 4.6 |
●電源別に順位を整理すると
石油
1.日本
2.イタリア
3.スペイン
4. 韓国
石炭
1.中国
2.インド
3.ドイツ
4.韓国
ガス
1.ロシア
2.イタリア
3.日本
4.米国
原子力
1.フランス
2.スウェ-デン
3.韓国
4.スペイン
水力
1.カナダ
2.スウェ-デン
3.ロシア
4.イタリア
その他(太陽光・風力・地熱他再生可能エネルギ)
1.スペイン
2.ドイツ
3.イタリア
4.スウェ-デン
●世界の全エネルギ-の中の再生可能エネルギの比率です
21世紀の再生可能エネルギ-ネットワ-ク(REN21)2015年発表
注:図の解説
電気だけではありません燃料等全エネルギ-です。
原子力エネルギ- 2.6%
化石(石炭・石油)等 78.3%
再生可能エネルギ- 19.1%
内訳
昔からの木材利用 9%
現代なって出来たもの 10.1%
内訳 バイオマス・地熱利用・太陽熱利用 4.1%
水力 3.9%
風力・ソ-ラ・バイオマス・地熱発電 1.3%
穀物燃料 0.8%
●地域、国別(上位7ケ国)の再生可能エネルギ-比率
21世紀の再生可能エネルギ-ネットワ-ク(REN21)2015年発表
注:左側のグラフは世界、ヨ-ロッパ、ブリックスです
ブリックスとはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国です。
右側のグラフは再生可能エナルギ-の多い順7ケ国です。
中国、アメリカ、ドイツ、イタリア、スペイン、日本、インドです
水力発電は含んでいません。
色による種類は下から
ブル- 風力発電
黄色 太陽光(ソーラ)発電
赤 バイオマス発電
薄茶 地熱発電
薄緑 太陽熱と海洋発電
●2012年、年間発電量に占める風力と太陽光の割合
国際エネルギ-機関(IEA)資料
注:これに再生可能エネルギ-の水力、地熱、バイオマスを加えればさらに比率は増えます。
それにしても1位のデンマ-クが33.3%と比べると日本は0.9%です。
●2014年4月7日 国連環境計画(UNEP)の発表
昨年1年間に世界各国で新たに建設された発電設備のうち再生可能エネルギ-の割合
新設再生可能エネルギ-は全体の43.6%
累計で 2012年 7.8%
2013年 8.5%
世界的には再生可能エネルギ-は着実に増えています。
日本が3~4%(年度は2010年ですが)ですから、低いことがわかります。
●世界全体の風力・太陽光・原子力発電導入量 2016年
発電量全体の中で、再生可能エネルギ-が占める比率の最新デ-タ-新聞に載りましたので転載します。
●再生可能エネルギ-が発電量全体に占める比率
国際エネルギ-機関・世界エネルギ-統計 2017から
東京新聞2018年3月11日朝刊から転用改変
◎国別比率再生可能エネルギ-
国名 | 水力 | 太陽光 | 風力 | その他 | 現状 | 中期目標% |
日本 | 7.7% | 4.3% | 0.5% | 3.3% | 15.8% | 2030年 | 22~24% |
イギリス | 1.6% | 3.0% | 11.1% | 8.8% | 24.6% | 2030年 | 31% |
中国 | 18.6% | 1.8% | 4.8% | | 25.2% | 2020年 | 35% |
フランス | 10.5% | 1.5% | 3.8% | 1.3% | 17.3% | 2030年 | 40% |
スペイン | 13.4% | 3.0% | 18.0% | 4.1% | 38.5% | 2020年 | 40% |
カルフォルニア | 14.6% | 9.9% | 6.8% | 8.8% | 40.2% | 2030年 | 50% |
ドイツ | 3.2% | 5.9% | 12.0% | 8.0% | 29.2% | 2030年 | 50% |
カナダ | 59.4% | 0.4% | 4.2% | 1.5% | 65.7% | | |
注:現状は中国のみ2017年、他は全て2016年
アメリカは国として目標を公表していない為カルフォルニア州のみ
端数処理に都合で各項目合計は100%にならない
日本の2030年度目標は各電力の中間値にした
諸外国と比べて中期目標が低いのが特徴で問題です。
◎電源構成見通し
電源 | 日本 | 世界 |
2016年 | 2030年 | 2016年 | 2040年 |
原子力 | 1.8% | 約20~22% | 5.3% | 3.5% |
火力(天然ガス含) | 81.9% | 約56% | 52.2% | 30.4% |
水力 | 7.7% | 約8.8~9.2% | 17.9% | 12.6% |
太陽光 | 4.3% | 約7.0% | 4.9% | 35.0% |
風力 | 0.5% | 約1.7% | 7.1% | 16.9% |
その他 | 3.3% | 約4.7~5.7% | 2.0% | 1.8% |
注:原子力発電に注目してください。
世界的に減る傾向にあるのに日本は増えています
太陽光も風力も世界と逆行しています
「ドイツの例」
ドイツでは再生エネルギ-への転換が急速に進んでいます。
日本では一部の人たちが再生化のエネルギ-の不安定さやコストを考えて
色々と異論を唱えたり、非現実的だと言いがかりをつけています。
しかしドイツでは着実に進んでいます。
もともとドイツでは10年の猶予期間を設けて原発を廃止する国策でした。
しかし福島の事故をうけて2011年6月に国策として脱原発を決め、
国内17基の原発の内8基をを即時閉鎖、
残りは2022年までに閉鎖する方針を決定しました。
風力や太陽光などの再生可能エネルギ-を急速に増やした結果
2012年には総発電の22%が再生可能エネルギ-となりました。
その結果2012年には周辺国への電気の輸出入で輸出の方が増えました。
つまり電気が余っていることです。
2011年にドイツが脱原発を決めたとき、
口さがない人は「実はドイツはフランスから原発で発電した電気と買っているんだ」と中傷したものです。
しかし現実は余っているのです。
ただし季節や時間の変動がありますから輸入もありますが、輸出の方が多いのです。
●2012年の電力輸出量 666億Kw/時
輸入量 438億Kw/時
輸出超過 228億Kw/時
●最新2014年のドイツの電源別発電割合です。
ドイツのこの比率を日本での原発事故が起きる前の2011年と比較してみます。
| 2011年上半期 | 2014年(上の図) |
石炭火力 | 44.1 | 45.6% |
ガス火力 | 12.0 | 6.3% |
原子力 | 21.3 | 17.2% |
自然エネルギ- | 22.7 | 30.9% |
内訳 | 水力 | 内訳 | 3.3 | 内訳 | 3.1 |
バイオマス | 7.2 | 10.5 |
風力 | 8.3 | 10.3 |
太陽光 | 4.0 | 7.0 |
注:わずか3年間で急速に自然エネルギ-が増えています。
特に原発が減って、バイオマス、風力、太陽光が増えています。
「日本の再生可能エネルギ-供給の推移」
再生可能エネルギ-が原発事故の後、どのように増えたのかを見てみます。
「永続地帯2016年度版報告書」
NPO法人環境エネルギ-政策研究所+千葉大学倉坂研究室
●原発事故の翌年2012から2016年の増加率を記載します。
この統計には電力以外の熱利用の資料も含まれますが、
電力のみの表です。
発電種類 | 伸び率 |
太陽光発電 | 733.5% |
風力発電 | 103.7% |
地熱発電 | 94.6% |
小規模水力発電(1万Kw以下) | 100.0% |
バイオマス発電 | 261.0% |
再生エネ発電合計 | 229.0% |
この表を見ると太陽光発電が極端に伸びてていることがわかります。
その次はバイオマス発電です。
原発を廃止して再生可能エネルギ-を増やすといいながら、
現実は風力・地熱・小型水力は増えていないのです。
太陽光発電は多くの問題を抱えます。
大規模な発電いわゆるメガソ-ラは微生物や植物の生態系破壊と景観破壊につながります。
太陽光は小規模な建物の屋根に設置するべきです。
バイオマスは不要な木材を燃やすので温暖化につながります。
再生可能エネルギ-も結局は現状では儲かるので企業の投資として行われています。
日本の場合地熱の潜在余力があるので規制緩和をする必要があると思います。
「再生可能エネルギ-へすぐ転換できるか?」
原子力政策を推進する人も反対する人も再生可能エネルギ-に転換する事は賛成しています。
しかし国のエネルギ-の100%をすぐに再生可能エネルギ-に転換する事は難しい事です。
そこで微妙に意見が異なってきます。
●原子力政策推進の人の考え
原子力発電は危険なので止めるべきだ。
しかし直ぐには中止できない。
現実問題としては5~10年又は30年位かけて再生可能エネルギ-を増やし、
徐々に原発を減らしていく。
一見してもっともらしい考えです。
注:黄色線の部分、討論の中でもっともらしい意見を言って
最後に「現実問題としては」と言う人にほとんどは推進の人です。
要注意です
しかし現在(2014年2月18日)再生可能エネルギ-は充分ではないのに電気はあり余っています。
石炭、石油、天然ガス、水力で発電しているからです。(水力は再生可能エネルギ-ですが)
それらを全て止めていきなり再生可能エネルギ-にすることは不可能です。
再生可能エネルギ-の定義は国として、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスと定めています。
再生可能エネルギ-と言う言葉だけを取り出して、
「それが無理だからやはり当面は原子力に頼るしかない」と言うのは暴論です。
●原発反対の人の考え
当面は火力(石炭、石油、天然ガス)と水力に頼り、早急に再生可能エネルギ-を拡大する。
現状でも電気は充分すぎるほど余っていますから最も現実的な判断でしょう。