ポツダム共同宣言は
1945年7月26日に三ケ国宣言として出されました。
その前段階として、
1943年11月27日にカイロ宣言が出されています。
そのカイロ宣言の内容を
ほぼ踏襲したのがポツダム宣言です。
「カイロ宣言」
ローズヴェルト大統領、蒋介石大元帥、
チャ-チル総理大臣が声明を発表しました。
●日本国に関する英、米、華三国宣言(カイロ宣言)
三大同盟国は、日本国の侵略を制止し、
かつ、これを罰するために、
今回の戦争をしているのである。
右の同盟国は、自国のために
何の利益も要求するものではない。
また、領土拡張の念を有するものではない。
右の同盟国の目的は、
日本国から、
1914年の第一次世界大戦の開始以降において
日本国が奪取し又は占領した
太平洋における一切の島嶼を剥奪すること、
並びに満州、台湾及び澎湖島のような
日本国が清国から盗取した一切の地域を
中華民国に返還することにある。
日本国はまた、暴力及び貪欲により
日本国が略取した他の一切の地域から
駆逐されなければならない。
前記の三大国は、
朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、
朝鮮を自由かつ独立のものにする決意を有する。
右の目的をもって、右の三大国は、
同盟諸国の中で日本国と交戦中の諸国と協議し、
日本国の無条件降伏をするのに必要な、
重大かつ長期の行動を続行する。
この宣言に基いて戦争は続けられ、
ポツダム宣言に至ります。
「ポツダム宣言」
署名したのはカイロ宣言と同じ
アメリカ、イギリス、中国三ケ国です。
●1945年7月26日、Potsdam,Germanyで三国署名
1、われら合衆国大統領、中華民国政府主席
及びグレ-ト・ブリテン国総理大臣は、
われ等の数億の国民を代表して協議の上、
日本国に対し今次の戦争を終結するの
機会を与えることで意見が一致した。
2、合衆国、英帝国及び中華民国の
巨大なる陸、海、空軍は、
西方より自国の陸軍及び空軍による
数倍の増強を受け、
日本国に対し最後的打撃を加える態勢を整えた。
この軍事力は、日本国が抵抗を終止するまで
日本国に対し戦争を遂行している
全ての連合国の決意により支持せられ、
かつ鼓舞されているものである。
3、世界の奮起している自由な人民の力に対する、
ドイツ国の無益かつ無意義な抵抗の結果は、
日本国国民に対する先例を
極めて明白に示すものである。
現在、日本国に対し集結しつつある力は、
抵抗するナチスに対して適用された場合において、
全ドイツ国民の土地、産業及び生活様式を
必然的に荒廃に帰させる力に比べて、
測り知れない程度に強大なものである。
われらの決意に支持された
これらの軍事力の最高度の使用は、
日本国軍隊の不可避かつ完全な壊滅を意味し、
また同様に、必然的に
日本国本土の完全な破滅を意味する。
4、無分別な打算により
日本帝国を滅亡の淵に陥れた、
わがままな軍国主義的助言者により、
日本国が引続き統御されるか、
又は理性の経路を日本国がふむべきかを、
日本国が決定する時期は到来した。
5、われわれの条件は以下のとおりである。
われらは右の条件から離脱することはない。
右に代わる条件は存在しない。
われらは遅延を認めない。
6、われらは無責任な軍国主義が
世界より駆逐されるまでは、
平和、安全及びに正義の新秩序が
生じえない事を主張することによって、
日本国国民を欺瞞し、
これによって世界征服をしようとした
過誤を犯した者の権力及び勢力は、
永久に除去されなければならない。
7、このような新秩序が建設され、
かつ日本国の戦争遂行能力が
破壊されたという確証があるまでは、
連合国の指定する日本国領内諸地点は、
われらがここに指示する基本的目的の
達成を確保するため占領される。
8、カイロ宣言の条項は履行され、
また、日本国の主権は本州、北海道、九州及び
四国並びにわれわれが決定する諸小島に局限される。
9、日本国軍隊は完全に武装解除された後、
各自の家庭に復帰し、平和的かつ
生産的な生活を営む機会を与えられる。
10、われは日本人を民族として
奴隷化しようとし又は
国民として滅亡させようとする
意図を有するものではないが、
われらの捕虜を虐待した者を含む
一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰を加える。
日本国政府は、日本国国民の間における
民主主義的傾向の復活強化に対する
一切の障害を除去しなければならない。
言論、宗教及び思想の自由並びに
基本的人権の尊重は確立されなければならない。
11、日本国は其の経済を支持し、
かつ公正な実物賠償の取立てを
可能にするような産業を維持することを許される。
ただし、日本国が戦争のために
再軍備をすることができるような
産業はこの限りではない。
此の目的のため、原料の入手(その支配とはこれを区別する)は
許可される。
日本国は、将来世界貿易関係への参加を許可される。
12、前記の諸目的が達成され、
かつ日本国国民が自由に表明する
意思に従って平和的携行を有し、
かつ責任ある政府が樹立されたときには、
連合国の占領軍は直ちに日本国より撤収する。
13、われらは、日本国政府が直ちに
全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、
かつこの行動における同政府の誠意について
適当かつ充分な保障を提供することを
同政府に対し要求する。
これ以外の日本国の選択には、
迅速かつ完全な壊滅があるだけである。
8月9日午後11時30分過ぎ
宮中防空壕で最高戦争指導会議が開かれました。
翌10未明2時30分、
天皇の決意でポツダム宣言を
受諾することが決定しました。
東郷外務大臣は直ちに
スエ-デンとスイスの公使を通じて
三ケ国宣言受諾を打電しました。
● 電文 (原文カナ・読みやすくしました)
昭和20年8月10日
発 東郷外務大臣
在 瑞西(注:スイス) 加藤公使
在 瑞典(注:スェ-デン) 岡本公使
件名 三国宣言受諾に関する件
帝国政府においては
常に世界平和の促進を希求し給い
今次世界大戦の継続により
もたらされる惨禍より人類を免れしめんが為、
速やかなる戦闘の終結を
祈念し給う天皇陛下の大御心に従い
数週間前当時中立関係にありたる
「ソヴィエト」連邦政府に対し
敵国との平和回復の為斡旋を依頼せるが
不幸にして帝国政府の
平和招来に対する努力は結実を見ず、
ここに於いて帝国政府は天皇陛下の
一般的平和克服に対する御祈念にもとづき
戦争の惨禍を出来得る限り速やかに
終始せしむことを欲し左の通り決定せり
帝国政府は1945年7月26日、「ポツダム」に於いて
米、英、支三国政府首脳者に依り発表せられ
爾後「ソ」連政府の参加を見たる
共同宣言に挙げられたる条件を
右宣言は天皇の国家統治の大権を変更するの
要求を包含し居らざることの了解の下に受諾す
注:国体護持、つまり天皇制の維持が
保たれるという保証と解釈した
帝国政府は右了解にして誤りなきを信じ
本件に関する明確なる意向が
速やかに表示せられんことを切望す
この外務省の電報に対し陸軍では
猛烈な反対が起き首相自身が動揺しました。
一時は軍部によるク-デタ-の噂も流れました。
その中で13日午前8時半、首相官邸地下壕で
再度最高戦争指導者会議が開かれましたが、
紛糾し午後7時に散会しました。
そして14日午前10時50分から
宮内庁防空壕で御前会議が開かれ、
天皇の「聖断」により正式に
「ポツダム宣言」を受諾することが決定されました。
外務省では直ちにスイス政府を通じて
受諾を連合国に通報するように加瀬公使に打電しました。
●昭和20年8月14日 午前11時0分発
在瑞西 加藤公使 東郷外務大臣
「ポツダム」宣言の条項受諾の件(本電)
第352号(緊急)
貴任国政府に対し別電第353号の通り
米国政府及び同政府を通じ
英蘇支三国政府に伝達方依頼せられたし
参考として別電第353号及び354号と共に瑞典に転電せり
其の直後に確認の為
日本政府は連合国に対し要望を申し入れしています。
●発信日時 昭和20年8月15日 午後3時
発信者 東郷外務大臣
受信者 在瑞西 加藤公使
電信番号 358
「ポツダム」宣言の或は条項実施に関する
8月14日附日本政府の四国政府に対する希望申入
注:少し読みやすく修正してあります
帝国政府は「ポツダム」宣言の
若干条項の実施の円滑を期する為、
切実なる希望を存し、
之を右宣言実施条項署名の際、
又は其の他適当なる機会に開陳せしめたき処、
或は斯かる機会なき事を恐れ
ここに之を瑞西国(スイス)政府の斡旋に依り
米英支蘇四国政府に伝達せんとす
一 「ポツダム」宣言中の占領の目的が、
専ら「ポツダム」宣言に掲げられたる
基本的目的の達成を保障するに在るに鑑み、
四国側に於いては帝国政府が該条項を
誠意を以て実行せしむとするものなるに信頼し、
帝国政府の責務遂行を容易円滑ならしめ、
且無用の紛糾を避くるが如く配慮ありたし、
之が為
(1)連合国側の艦艇又は軍隊の
日本本土進入に付ては日本側準備の関係もあり、
予めその予定を通報ありたきこと
(2)連合国の指定すべき日本国領内の
占領の地点は、その数を最小限度に止め、
且その選択に当り、例えば東京を除外すること、
並びに右当該地点に派駐せらるる
兵力も象徴的程度に止むることを切実に考慮ありたし
二 武装解除は海外にある
三百万余の軍隊に関連あると共に、
日本将兵の名誉に直接触れたる
最も困難機微なる問題なること言をまたざる所にして、
之が実施に付ては帝国政府に於て
最も苦慮し居る次第なるが、
之が実効を期する最善の方法としては
天皇陛下の御命令に基き
帝国軍自ら実施し連合国は
其の円滑なる実施の結果
武器の引渡を受くるものと致度
大陸にある帝国軍の武装解除に当りては、
第一線より逐次後方に向け
段階的に実施することとしたし
武装解除に関連し海牙(ハ-グ)陸戦法規代35条を準用し、
軍人の名誉を重んじ、帯剣はこを認められたし
又連合国側が武装を解除せられたる日本軍人を
強制労役に使用する如き意図を有せざるものと了解す
海外に於て武装を解除せられたる
日本軍人をそのまま永く海外に駐留せしむることは
彼我双方にとり面白からざる種々の
複雑困難なる題を生ずるのところあるに付き
連合国側に於て速かにこれを
日本内地に撤収せしむる為に
必要なる船舶及其の輸送上の便宜を
供給せられんことを切望す
三 停戦に関しては遠隔の地にある部隊に
天皇陛下の御命令を充分に
徹底を期する要あるをもって
停戦の実施期日に付ては幾分の余裕を置かれたし
四 太平洋の離島に在る帝国軍隊に対し、
必要欠くべからざる程度の食糧医薬品を送付し、
及之等離島より本土に傷病兵を輸送する為
至急連合国に於て、所要の措置を講ずるか
又は我方対し便宜を供与せられたし
このようにして8月14日、
日本は正式にポツダム宣言を受諾しました。
翌日8月15日正午、
天皇の重大放送により国民は支那事変以来長く続いた
戦争の敗戦を知ることになります。