コレステロ-ルを含む食品の摂取制限解除 2
● 高コレステロ-ル血症患者への対応
日常生活の中で実行可能なレベルでの
脂質並びにコレステロ-ル摂取量の制限によって
期待される血清コレステロ-ル値の改善は、
欧米人と同様に日本人でも認められる。
しかし、飽和脂肪酸やコレステロ-ルを
含む食品を制限すると、
特に高齢者において低栄養になる可能性があり、
他の栄養素の不足に注意する必要がある。
臨床研究からは、
食事によるコレステロ-ル低下療法が、
高コレステロ-ル血漿患者の
心筋梗塞の罹患を予防するかどうかは明らかではない。
家族性高コレステロ-ル血症
(LDL受容体に変異がある)の
ヘテロ患者について、
血中コレステロ-ルを減少させる食事療法により、
虚血性心疾患罹患や死亡減少が
もたらせるかどうかを調べた介入研究の
メタ・アナリシスでは、
虚血性心疾患罹患や死亡の減少は示されていない。
注:家族性の高コレステロ-ルは
遺伝(ヘテロ遺伝)なので一般と別に考えるべき
● 糖尿病患者への対応
糖尿病患者で、どのような脂肪エネルギ-比、
脂肪酸組成の食事が、
腎症、網膜症などの合併症を少なくし、
死亡率を減少できるのかは
ほとんど検討されていない。
このため、健康な人に対する疾病予防を
目的とした目標量の値を用いる。
一価不飽和脂肪酸については、
HbA1cの変化について
メタ・アナリシスが行われていて、
高一価不飽和脂肪酸食群は
低一価不飽和脂肪酸食群に比べて、
HbA1c減少効果(-0.21)が認められているが、
疾病リスクに関しては不明である。
動脈硬化性疾病予防ガイドライン2012年版では、
糖尿病があると
LDLコレステロ-ルの管理目標値は
120mg/dL未満になっていて、
120mg/dL以上の場合、Keysの式に従い、
飽和脂肪酸やコレステロ-ル摂取量の減量が望まれる。
しかし、飽和脂肪酸やコレステロ-ルを含む食品を制限すると、
特に高齢者において低栄養になる可能性があり、
他の栄養素の不足の可能性に注意を払う必要がある。
また、糖尿病患者において、
メタ・アナリシスで卵摂取量
(コレステロ-ル摂取量の代替指標)と
冠動脈疾患との有意な関連が認められていて
(健康な人では認められていない)、
卵の最大摂取群は最小摂取群に比べて、
1.54倍のリスクになっている。(注:外国の研究)
しかし、日本人9万人を対象とした
JPHC研究では、糖尿病患者においても、
卵の摂取量と心筋梗塞罹患
(心筋梗塞による脂肪も含む)には関連を認めていない。
● まとめ
生活習慣病の重症化予防に関して、
脂質の目標値を設定できる科学的根拠は十分ではない。
さらに、各疾患の原因により
治療法(食事療法を含む)も異なることも多く、
薬物療法との関わり合いも複雑なため、
食事療法の内容を一律に決めることは困難である。
このため、重症化予防を目的とした
脂質の目標値は設定しなかった。
この厚生省報告にもあるように、
コレステロ-ルや脂質の摂取制限を
決めることは無理があるようです。
注目は各項目に
「特に高齢者において低栄養になる可能性があり」
と書かれていることです。
高齢者は食が細くなり、
さらに真面目に薬で数値を
強引に下げる傾向があります。
平均余命を考えた時
生活の質を維持することを
優先に考えるべきです。
高齢者の糖尿病でもHbA1cが
8.0くらいあったほうがよいという意見も出始めています。
全国の健康保険組合が赤字に苦しんでいる現在、
基準を見直して薬代を減らすべきだと思います。