血圧基準の変移
昔は水圧が低いとアパ-トの3階で
水がチョロチョロしか出ないなんていう事が良くありました。
あまり水圧が高くても
古い水道管だと水漏れしたり、
ホ-スが破けたりします。
血圧も同じことです。
あまり低いと血の巡りが悪く
栄養や酸素が身体の末端まで行き渡りません。
かといってあまり高いと
血管が破れ出血を起こす可能性があります。
ではどの位の血圧が妥当かと言うことになりますが、
年齢により血管の丈夫さも変わりますし、
肥満で血管を圧迫している
場合もあるのでなかなか難しい問題です。
一応WHOや国では基準を設けていますが、
どういう訳か日本では年々基準が厳しくなってきています。
まずは1990年からの基準の変化を見てみます。
検査基準の変化
● 1990年 高血圧診療の手引き
◎治療の対象
下が90 mmHg以上の場合
下が90 mmHg以下で上が常時170~180 mmHgの人
治療はまず、非薬物療法を行い、
降圧剤は少量で開始、徐々に降圧を図る
◎降圧の目標は
下が90 mmHg未満
上が60歳代で 140~160 mmHg
70歳代で 160~180 mmHg
注:この頃は170 mmHg以上の人が治療対象でした。
そして治療目標は70歳代で160mmHgだったのです。
● 1999年 国際高血圧学会の指針(高血圧患者は1800万人)
高血圧
上160 mmHg以上もしくは
下が95 mmHg以上 約1800万人
境界域
上140~159 mmHgもしくは下90~94 mmHg
正常血圧
上140 mmHg未満 下90 mmHg未満
注:この時点では140までの人を正常、
160以上を高血圧としていました。
その中間の140~159は境界域として
高血圧とはしていませんでした
● 2000年 高血圧治療ガイドライン
◎治療の対象
80歳代では積極的な治療を行なうべきである
70歳代 上が160~170 mmHg以上
下が90以上
治療目標
上が160 mmHg
下を90 mmHg未満
緩慢な降圧に心掛ける
注:治療はやはり160以上です。
● 2004年 高血圧治療ガイドライン(高血圧患者は5000万人)
◎治療の対象
いずれの年齢でも上が140 mmHg以上
下が90 mmHg未満
注:このときから140以上が高血圧になりました。
そして高血圧患者は一挙に5000万人になりました
メタボ検診も含め日本の高血圧基準は
日本高血圧学会がリ-ドし、
そこの発表の「高血圧治療ガイドライン」が標準とされています
● 高血圧治療ガイドラインの変化
~1999 | 2000 | 2004 | 2009 | ||||||||
年齢 | 最大 | 最小 | 年齢 | 最大 | 最小 | 年齢 | 最大 | 最小 | 年齢 | 最大 | 最小 |
<70
| <160 | <95 | <60 | <130 | <85 | <65 | <130 | <85 | <65 | <130 | <85 |
60~69 | <140 | <90 | 65< | <140 | <90 | 家庭 | <125 | <80 | |||
70< | <180 | <100 | 70~79 | <150 | 75<
| <140 | <90 | 65< | <140 | <90 | |
80< | <160 | 家庭 | <135 | <85 |
● そして2014年ガイドラインを見直して
少し基準をゆるくしました。
2014年 | ||
年齢 | 最大 | 最小 |
<75 | <140 | <90 |
家庭 | <135 | <85 |
75< | <150 | <90 |
家庭 | <145 | <85 |
2014年に発表された日本人間ドック学会の
基準が波紋を呼びました。
● 2014年4月5日
日本人間ドック学会及び健康保険組合連合会
正常の範囲 上 88~147mmHg
下 51~94mmHg
従来の高血圧学会の基準と比べると
大幅にゆるくなっています。
国や各医療機関は相変わらず
従来の考え方をしていますので混乱していますが、
身体を見ている専門の日本人間ドック学会の
発表は信頼性があります。
1999年国際高血圧学会の指針では
高血圧患者が約1800万人、
高血圧治療ガイドライン2004年では約5000万人、
単純にいって5年で3200万人患者が増えたことになります
もし国がこの基準を採用すれば
大幅な医療費の削減につながりますが、
かなり反対が予想されます。