高速増殖炉とは

問題になっているだけではなく

実際には完成しないだろうと思われているのが高速増殖炉「もんじゅ」です。

高速増殖とはどんな意味でしょうか?

 

「増殖炉」

通常の原発では中性子がウラン-235に当って核分裂を起こすことは書きました。

その時一部の中性子が核分裂しないウラン-238にも当ります。

するとウラン-238はベ-タ-崩壊を繰り返しながら、

  ウラン-238

     ↓

  ウラン-239

     ↓

  ネプチニウム-239

     ↓

  プルトニウム-239

このようにプルトニウム-239になります。

プルトニウムは更に変化し、別経路で238、240、241、242へと変化もします。

プルトニウム-239は核分裂(燃える)します

他のプルトニウムはほとんど分裂しません。

通常の軽水炉でもプルトニウムが出来るのです。

勿論ウラン-235の分裂より、プルトニウムの生産は少なくなります。

(増殖率又は転換率が少ない)

前項目の「核燃料の燃焼による変化」を参考にして下さい。

そこで、もし軽水炉を運転してウラン-235を使う量より

プルトニウム-239の生産が多くなれば、

運転すればするだけ次の燃料が増えるのです。

ウラン1つを燃やしてプルトニウムが2つできればむしろ燃料は増えていきます。

無限のエエルギ-が得られるのです。

それ専用の原発を 作ろうして考えられたのが「高速増殖炉」です。

つまり「もんじゅ」ですし、実験炉では「常陽」があります。

 

「高速増殖炉の燃料」

最初の分裂を起動させるための若干のウラン-235、

それと分裂させるためのプルトニウム-239、

そのまわりをぐるっとウラン-238で囲んだ八角形の構造です。

核分裂が始まると中心のプルトニウムから中性子が飛び出し

外側のウラン-238に当って、さらにプルトニウムを作ろうということです。

 

「高速増殖炉(もんじゅ)の基本的仕組み」

普通の原発ではウランを核分裂させる中性子はスピ-ドの遅い中性子(熱中性子)です。

中性子のスピ-ドを遅くするために減速材として水が使われています。

中性子が当って核分裂するとそこから平均2.5個の中性子が飛び出します。

その内1個が次のウランに当るようにコントロ-ルすることで、安定した分裂が維持されます。

しかしわざわざプルトニウムを増やそうとするのですから、方法を変えます。

燃料としてウラン-235を使わずに、分裂するプルトニウム-239を使います。

スビ-ドの速い高速中性子をプルトニウム-239にぶつけて、

分裂時に発生する次の高速中性子の数を多くします。

その中性子が分裂しないウラン-238に当ってプルトニウムが出来るのです。

このあたりに多くの問題点があります。

 ・ 高速中性子は衝突確率が低いため核燃料を多く詰め込んで密度を上げる

 ・ エネルギ-発生が大きいので温度が高くなる

 ・ 中性子が減速してしまうため、冷却として水を使えない

 ・ 冷却材として液体ナトリウム(98℃で液体になる)を使う

   金属を腐食するためパイプに穴が開く事故が多発する。世界中試運転段階でもこの事故がある。

   さらに水に温度を移す場所でピンホ-ルが起きた場合、

   気圧の高い水が低いナトリウムに流れ込み瞬間的に大爆発を起こす可能性がある。

 

 

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 *1次ナトリウム系

  529℃に加熱したナトリウムは安全性のため原子炉格納施設内だけで動き、

  中間熱交換器で次のナトリウムに温度を移します。

  ナトリウムの沸点は約880℃なので気圧は通常気圧です。

 *2次ナトリウム系

  505℃の液体ナトリウムの熱を原子炉格納施設の外側で加熱器により水に熱を移します。

  この時の水は気圧が高く(127kg/平方㎝)温度は483℃になります。

 途中で圧力解放して蒸気を発生させタ-ビンを回し発電します 

 

「今まで高速増殖炉にかかった費用」

これだけかけても完成出来ないもんじゅにさらに巨額を使おうとしています。

まさに公共事業の最たるものです。

 

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「もんじゅは存続出来ない」

もんじゅは着工以来既に30年もたっています。

30年もたてば機械でも人間でも老朽化します。

成功しないうちに既に老朽化しているはずです。

私たちの税金が2009年までに9000億以上も湯水のように注がれました。

現在では1兆円をこえているっでしょう。(2014年現在)。

その上に維持費として毎日5,500万円も投入されています。

ちなみに2014年度の維持費は199億円で、年間予算は1850億円にもなります。

その内9割は政府から出ますので私たちの税金です

高速増殖炉としてのもんじゅの実現が不可能であることは国民に知れ渡ってきました。

しかしあくまでも続行したい政府はもんじゅの目的を変えました。

 *当初の目的

  プルトニウムを燃やして増殖し、永遠なエネルギ-を得る

 *目的変更

  原発から出た核廃棄物の内半減期の長い元素を燃やして短い元素にする。

  そうすれば後の地層処分に有利になる。

   例えば ネプツニウム-237(半減期214万年)

       アメリシウム-243(半減期約7370年)

       これらを核分裂(燃やす)させて半減期の短い

       セシウム-137(半減期30.2年)

       ストロンチウム-90(半減期28.5年)

       に変える。

言葉遊びの屁理屈のようです。

現在問題になっていえるセシウムやストロンチウムに変えるから安全だと

言われて誰が納得するでしょうか?

しかも、もし実現したとしても現在の原発の廃棄物を処理するためには

もんじゅを20基以上作る必要があります。

まさに公共事業と官僚の利権温存の最たるものです。

 

「MOX・プルサ-マル」

高速増殖炉はなかなかうまく行きません。

このままでは国内にプルトニウムの在庫が増えて核拡散防止条約違反になります。

そこで考えられたのが

普通の原発にプルトニウムを一緒に燃やしてしまおうする計画がプルサ-マル発電です。

この名前は和製英語で、

Plutonium Thermal use(プルトニウムと熱中性子の熱)をくっつけた名前です。

そこで使う燃料はウラン-238とプルトニウムを混ぜた混合酸化物(Mixed Oxide)を使用します。

その略がMOXです。

通常の軽水炉ではウラン-235とウラン-238を混合した燃料を使いますが、

その時ウラン-238が2回ベ-タ-崩壊してプルトニウムに変わります。

そしてそのプルトニウムも原子炉内で燃えて(分裂)しています。

軽水炉の発電の内30%くらいはプルトニウムによるものとされます

プルサ-マル発電では最初から燃料にプルトニウムを入れるので、

発電全体の50%がプルトニウムによるものとされます。

現在国内でプルサ-マルをしている原発は、

 ・ 玄海原発    3号機

 ・ 伊方原発    3号機

 ・ 福島第一原発  3号機

 ・ 高浜原発    3号機

勿論現在は皆停止しています。(2013年8月現在)

半減期の長いプルトニウムを使用して半減期が短いプルトニウムに変換できるのと、

現状の軽水炉をそのまま使用できるという利点はあります。

しかしプルトニウムの混合燃料は、核的特性、物理的・化学的特性、運転制御などかなり困難な面もあります。