原子力規制委員会設置法案

原子力規制委員会は今回の福島原発の事故を受けて2012年6月21日に成立しました。

原子力発電所の周辺の組織としては経済産業省・資源エネルギ-の特別機関として

「原子力安全・保安院」と内閣府の審議会として「原子力安全委員会」があります。

事故の後毎日のようにマスコミに登場した名前ですからすっかり有名な名前になりました。

具体的に何をするかと言うと、保安院は経済産業省ですから原発政策を推進するところです。

あくまでも推進と言う立場で原発の審査や違反の取締りをしています。

それに対して原子力安全委員会は国民の立場で規制を書ける委員会です。

簡単に言うと保安院は推進側、安全委員会は規制側です。

しかしこれは建前だけで、実は両方とも推進側であることは分かってしまいました。

いわゆる「原子力ムラ」といわます。

今回推進と規制を一つにまとめで出来たのが「原子力規制委員会」です。

泥棒と警察を一緒にして組織を作ったようなものです。

そのための法案が設置法案です。

本文は短く第31条まで(A4で約6ペ-ジ)しかありません。

それに対して附則が長く97条もあります。(A4で80ペ-ジ以上)

肝心な事は附則に書かれているのですが非常に分かりづらくなっています。

 

●[法案]

第1条  目的

 この法律は平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う

 原子力発電所の事故を契機に明らかとなった原子力の研究、

 開発及び利用に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、

 並びに1つの行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生じる問題を解消するため、

 原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識にたって、

 確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、

 又は実施する事務を一元的につかさどるとともに、その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で

 独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し、

 もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする。

第2条         設置

 国家行政組織法第3条第2項の規定に基づいて、環境省の外局として、原子力規制委員会を設置する。

第3条 任務

 原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、

 原子力利用における安全の確保を図ること(原子力に係わる製錬、加工、貯蔵、再処理及び

 廃棄の事業並びに原子炉に関する規制に関することを含む)を任務とする。

  注1: 1条でも3条でも繰り返し「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資する」という

    言葉が出てきます。軍備や核武装を思わせる言葉です。

 注2:3条では今後も原発政策を続けもんじゅを動かす事が明記されています(再処理の意味)

第4条~第6条 省略

第7条 委員長及び委員の任命

 1.委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験 

  並びに高い知見を有するもののうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣賀が任命する。

 2.委員長の任免は、天皇が、これを認証する

以下略

第8条~9条 省略

第10条   会議

 1~3 省略

 4-3 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)による 通報を受けた場合、

   武力攻撃事 態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(事態対処法)の

   対策本部長への報告及び関係指定公共機関への通知

注: 戦争を想定した文章です。原発を武力に無理に結び付けている気がします。

   特定秘密法案ではこのあたりは国民に対し秘密になります

 4-4 以下省略

第13条 (審議会等)

 1.原子力規制委員会に、次の審議会等を置く。

  原子力安全専門審査会

  核燃料安全専門審査会

 2.前項に定めるもののほか、別に法律で定めるところにより原子力規制委員会に置かれる

  審議会等は、次のとおりとする。

  放射線審議会

  独立行政法人評価委員会(原子炉安全専門審査会)

第25条  (情報の公開)

 原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、

 その運営の透明性を確保しなければならない。

 以下省略

 

第31条で終わりますが、その後「附則」が延々と続きます。

特に他の法律を附則で変えています。

 

●附則の中で問題なところだけを書いて見ます。

第5条(原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討)

 原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織については、この法律の施行後3年以内に、

 この法律の施行状況、国会に設けられた東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が提出する報告書の内容、

 原子力利用における安全の確保に関する最新の国際的な基準を踏まえ、

 放射性物質の防護を含む原子力利用の確保に係る事務が我が国の安全保障に関わるものであること等を考慮し・・・・

  注1:事故調査委員会は 政府、国会、民間、東電と4つあります。

   その中の国会の調査委員会の 報告書を中心にすることになっています。

  注2:こんなところにも「我が国の安全保障」という軍事用語がでてきます。

第6条(政府の措置等)

 2.原子力規制庁の職員については、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、   

  原子力規制庁の幹部職員のみならずそれ以外の職員についても、    

  原子力利用の推進に係る事務を所握する行政組織への配置転換を認めないこととする

    ただし、この法律の施行後5年を経過するまでの間において、   

当該職員の意欲、適正を勘案して特にやむを得ない事由があると認められる場合は、この限りではない。

    注1:原子力関連の職場には行けないけど、他の省庁には行けますし、そこを経由することも出来ます

    注2:意欲とか適性を勘案すると原子力関連の職場に行く事もできますそんな変な法律があるのでしょうか。

第7条(国会法の改正)

 国会法の一部を次のように改正する。

 第69条第2項中「公正取引委員会委員長」の下に、「原子力規制委員会委員長」を加える。

  注: 公正取引委員会と同じ資格になる事です。

第12条(原子力基本法の一部改正)

 第2条に次の1項を加える

  2.前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに    

    我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。

注:ここにも安全保障と言う軍事用語が出てきます。

第15条(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正)

1条を「運転等に関し、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した」   

「もって、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」に改める。

 注:ここにも安全保障と言う軍事用語が出てきます。

第43条-3-5(設置の許可)

 2.前項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を原子力規制委員会に提出しなければならない

 3.発電用原子炉の型式、熱出力及び基数

 7.発電用原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用料

 8.使用済燃料の処分の方法

 10. 発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の事故は発生した場合における当該事故に対処するために必要な施設及び体制の整備に関する事項

  注: 8と10に適合する電力会社はないでしょう

第43条-3-6 (許可の基準)

 ・・・・その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めらときでなければ、動向の許可してはならない

 3.その者に重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転を

  適確に遂行するに足りる技術的能力があること。

  注: 今回の事故で現在の電力会社では無理な事は今回分かりました。

第43条-3-29(発電用原子炉施設の安全性の向上のための評価)

 発電用原子炉設置者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、その発電用原子炉施設における安全性の向上を図るため、

 原子力規制委員会規則で定める時期ごとに、当該発電用原子炉施設の安全性について、自ら評価しなければならない

  注:電力会社が自分で検査して安全です、とすれば良いのです。

第43条-3-31(運転の期間等)

 発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、

 当該発電用原子炉の工事について最初に第43条の3-11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする

 2.前項の期間は、その満期に際し、原子炉規制委員会の認可を受けて、1回に限り延長することが出来る。

 3.前項の規定により延長する期間は、20年を超えない期間であって政令で定める期間を超える事が出来ない

注:最初から40年運転することができるし、20年延長して60年も運転できるのです。

  しかも許可をする委員会は全員推進賛成のいわゆる原子力ムラの人たちです。

第50条-4-2(再処理施設の安全性の向上のための評価)

 再処理事業者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、その再処理施設における安全性の向上を図るため、

 原子力規制委員会規則で定める時期ごとに、当該再処理施設の安全性について、自ら評価しなければならない

  注:ここでも自分で検査しなさいと言うことです。