福島の小児甲状腺ガン

2017年6月5日(月)に、福島県の「第27回県民健康調査」検討委員会・第7回甲状腺検査評価部会が開かれました。

時間 13時30分~16時

場所 コラッセふくしま 多目的ホ-ル

●出席者名簿

氏名

立場

所属及び職名

星 北斗

委員・座長

福島県医師会 副会長

梅田 珠美

委員

環境省 環境保健部長

稲葉 俊哉

委員

広島大学 原爆放射線医科学研究所・教授

清水 修二

委員・部会員

福島大学 名誉教授

津金 昌一郎

委員・部会員

国立がん研究センタ- センタ-長

清水 一雄

委員・部会員

日本医科大学 名誉教授

高村 昇

委員

長崎大学 原爆後障害医療研究所 教授

床次 眞司

委員

弘前大学被ばく医療総合研究所 教授

成井 香苗

委員

福島県臨床心裡士会 東日本大震災対策プロジェクト代表

堀川 章仁

委員

双葉郡医師会 会長

加藤 良平

部会員

山梨大学大学院 病理学講座 教授

欅田 尚樹

部会員

国立保健医療科学院 生活環境研究部 部長

 

そこで発表された最新の「福島県の子ども達への甲状腺ガンの報告」を書きます。

結論から言うと通常年間発生率は100万人中1人と言われていますからかなりの高確率です。

ただし福島県の検査は症状がないのに検査していますから、

通常では発見できない微小なガンを発見している可能性もありますから一概には断定できません。

でもかなり多発していることは間違いないでしょう。

一時検査については煩雑になるので省き、二次検査のみを書きます。

二次検査では穿刺、吸引細胞診等で検査しています。

注:途中で修正をしますので発表ごとに異なる場合があります。

 

●第27回県民健康調査 検討委員会資料から(平成29年6月5日)

 過去の数字も併せて書きます。

23年度

受診者

41,810人

 

二次検査受診者

199人

 

 

悪性又は悪性疑い

15人

男5、女10

震災時年齢 11~18

手術

15人

 

 

良性結節

1人

乳頭ガン

14人

低分化ガン

0人

平均腫瘍径

13.5±6.9ミリ(6.0~33.0ミリ)

24年度

受診者数

139,338人

 

二次検査受診者

920人

 

 

悪性又は悪性疑い

56人

男21、女35

震災時年齢 6~18

手術

52人

 

 

乳頭ガン

52人

低分化ガン

0人

平均腫瘍径

14.5±7.8ミリ(5.2~40.5ミリ)

25年度

受診者数

119,328人

 

二次検査受診者

1,011人

0.909%

 

悪性又は悪性疑い

45人

男13、女32

震災時年齢 8~18

手術

35人

 

 

乳頭ガン

34人

低分化ガン

1人

平均腫瘍径

13.4±8.3ミリ(5.1~45.0ミリ)

26年度

 

受診者数

159,163人

 

二次検査受診者

1,307人

悪性又は悪性疑い

52人

男21、女31

震災時年齢 6~18

手術

38人

 

 

乳頭ガン

37人

 

他・甲状腺癌

1人

 

平均腫瘍径

9.4±3.1ミリ(5.3~17.4ミリ)

27年度

受診者数

111,348

 

二次検査受診者

919人

 

悪性又は悪性疑い

19人

男11、女8

震災時年齢 5~16

手術

11人

 

 

乳頭ガン

11人

 

平均腫瘍径

15.8±8.0ミリ(5.7~35.6ミリ)

28年度

受診者数

116,541人

 

二次検査対象者

660人

 

悪性又は悪性疑い

4人

男2、女2

震災時年齢 8~13

手術

2人

 

 

乳頭ガン

2人

 

平均腫瘍径

13.4±3.6ミリ(8.7~17.5ミリ)

注:29年度はまだ始まったばかりで今のところガンは0です。

 

◎23年度から28年度の合計は

 総受診者      687,528人

 悪性又は悪性の疑い  191人

 ガン確定       152人です

 100万人当たに換算してみると

 悪性又は悪性の疑い」 約278人

 ガン確定      約221人

 となります

 この数字を多いと判断するかどうかです。

 

◎通常甲状腺癌は100万人に1人といわれます。

 100万人に221人とは明らかに多い数字です。

 それに県民調査を信頼せずに他府県で検査しガンを発見し、この調査から漏れている人も多く存在します。

 しかし逆に、疑わしい人だけを検査していることや、

 将来の甲状腺癌を早期発見しすぎているからだというという指摘もあります。

 私は明らかに多いと感じています。

 

●評価部会の評価

 注:いつも同じですが、この検討会の評価や見解はかなり回りくどく分かりづらく書かれています。

   そして結論は「特段の健康被害が懸念されるレベルではない」と結論付けています。

 

◎今回の評価

 実効線量の推計結果に関しては、これまでと同様の傾向にあるといえる。

 これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていないことから、

 4ケ月間(事故後)の外部被ばく線量推計値ではあるが、

 「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される。

 部被爆実効線量:99.8が5mSv未満等)は、これまでえられている科学的知見に照らして、

 統計的有意差をもって確認できるほどの健康被害が認められるレベルではないと評価する。・・・・

 

◎これまで評価

 ☆先行調査を終えて、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などか推定される有病数に比べて

  数十倍のオ-ダ-で多い甲状腺がんが発見されている

  このことについては、将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを多数診断している可能性が指摘されている。

  これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ないこと、

  被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、

  地域別の発見率に大きな差がないことから、

  放射線の影響とは考えにくいと評価する。

 ☆但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全に否定できず、

  影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、

  検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである。

 

この検査結果について反論する研究者もいます。

山下教授は他のがんリスク(喫煙など)の方が重要だと主張しています。

しかし喫煙との比較では約10倍、PM2.5との比較では1~2倍の危険度になります。(岡山大学津田教授)

また、チェルノブイリで甲状腺ガンが増えたのは事故のあと4~5年くらいなので、

福島でそんなに早く増える事はないと主張する人がいます。

しかしチェルノブイリで4年以降に多発したのは、単に多発した時期だけの問題で、実際には事故の1年後から増えています。

ピ-ク時に急に増えたわけではありません。

正確な検査をしたから多く発見されたという意見もあります。

その他色々と言い訳を考えて福島の検査結果を否定する試みがあります。

 

次に津田教授の論文を掲載しますが、

この表を見れば分かるように、福島県内の各地区で発生率に違いがあります。(黄色)

単に過剰診断で増えたのであれば地区によるバラツキは無いはずです。

やはり放射線の影響を考えるべきではないかと思います。

 

●2014年2月7日福島県県民健康管理調査検討委員会発表デ-タによる甲状腺検診分のまとめ

 津田敏秀 岡山大学大学院環境生命科学研究所教授

 岩波書店「科学」2014年3月号

 国立がん研究センタ-の1975年から2008年までのデータ-から

 15歳~19歳の甲状腺がんの全国発生率100万人に5人との比較(若干高めの設定)

 平均有病期間2年

地区

比較

中通り北地区(福島市、桑折町他)

23.88倍

中通り中地区(二本松市、本宮市他)

61.88倍

郡山市

38.80倍

中通り南地区(白河市、西郷村他)

35.81倍

いわき市

17.32倍

いわき市を除く東地区

10.83倍

 注:よく甲状腺がんの発生が100人に1人と言われますが、100万に5人としてもかなりの倍率で甲状腺がんが増えていることがわかります。