IAEAの最終報告書

国際原子力機関(IAEA)は福島の事故を調査していましたが、2015年5月総括として最終報告書が出されました。

42ケ国の専門家約180人が参加して作成したものです。

報告書は2015年6月のIAEA定例理事会で審議された後、9月の年次総会に提出されるとのことです。

IAEAは米国主導で1957年に創設され国連の傘下の機関です。

役割は「原子力の平和利用」を促進する立場です。

国連内では健康の実現を目指すWHOより優位な立場にあります。

そして放射線防護に関して、各国の放射線防護の体制や基準を厳しく監督、監視しています。

そのため原子力が軍事利用されないに各国を監視しています。

しかし基本的に原子力の安全利用を推進する立場ですから

福島の事故処理が、いい加減なままで再稼動されることは次の事故につながるので困まるのです。

つまり、命や環境のために日本政府を批判しているわけではなく、安全に再稼動させる為に批判しているのです。

 

●報告書要旨  東京新聞から

序文 天野事務局長

 1.日本では原発は安全で大事故は起きないとの思い込みが広がり、事故の主な原因となった。

  電力事業者がこの考えを妥当とし、政府の規制当局も疑わなかった

  その結果、過酷事故に対する十分な備えがなかった。

 1. 規制の責任がさまざまな機関に分散し、どこに権限があるのか必ずしも明確ではなかった。

 1. 原発では決して、長時間の全電源喪失が起きないとの思い込みがあった。

  一つの原発で複数の原子炉が同時に危機に陥る可能性を考慮せず、大自然災害と同時に起きうる原発事故への対策も不十分だった。

 1.どの国も、原発の安全に関する現状に満足すべきではない。

  事故原因は、日本特有の問題とはいえないものもある。

  議論を続け、心を開いて経験から学ぶことが原発の安全文化向上の鍵で、全ての関係者に不可欠。

  常に安全が第一だ。

本文

 1.自然災害など外的な危険要因に対する原発の脆弱性について、体系的で総合的な方法で見直したことがなかった。

 1.事故当時、国内や海外の原発運転の経験は規制の中で十分に考慮されていなかった。

 1.東電は福島県沖でマグニチュ-ド8.3の地震が発生すれば最大約15メ-トルの津波が第一原発に達すると試算していたが、

  対策を取らなかった。

  原子力安全・保安院も迅速な対策を求めなかった。

 1.第一原発の設計は、津波のような外的な危険要因に十分対応していなかった

  多重の安全システムが一挙に壊れ、設計で想定されていなかった事態を引き起こした。

  その結果、過酷事故の進行防止や事態緩和のための手段が使えず、

  原子炉の冷却機能回復や、放射性物質の封じ込めに役立たなかった。

 1.IAEAの安全基準で勧告された確率論的安全評価(PSA)による審査は十分実施されず、非常用ディ-ゼル発電機の浸水対策などが欠けていた。

 1.原発で働く東電社員らは津波による電源喪失や冷却機能の喪失に十分な備えがなかった。

  適切な訓練を受けず、原発の情況悪化に対応できる機器もなかった。

 1.原発の安全に関する問題に遅滞なく対応する方法について、

  どの組織が拘束力のある指示を出す責任と権限を持つのか明確ではなかった

 1.保安員は(マニュアルで決められた)型どおりの安全審査しかできず、適切な時期に安全性を検証し、

  潜在する新たな安全課題を見つけ出す能力が弱かった。

 1.IAEAは2007年の訪日調査で「日本には設計基準を超える事故について検討する法的規制がない」と指摘、

  保安院が安全規制の向上に中心的な役割を果たすよう求めた。

 1.事故当時の規制や指針、手続きは重要な分野で国際的な慣行に十分従っていなかった。

  10年ごとの定期安全レビュ-では外的な危険要因の再評価が義務付けられていなかった。

  過酷事故の管理や安全文化でも国際慣行との違いが目立った

 1.日本では原発が技術的に堅固に設計されており、  十分に防護が施されているとの思い込みが何十年にもわたり強められてきた

  その結果、電力会社や規制当局、政府の予想の範囲を超え、第一原発事故につながる事態が起きた。

 1.原発事故と自然災害への対応では、国と地方の計画がばらばらだった。

  事故と災害の同時発生に協力して対応する準備がなかった。

 1.日本の国内法と指針は、緊急対応に当たる作業員の放射線防護の措置に言及していたが、詳細な取り決めが不足していた。

 1.IAEAは日本側と連絡を取って各国に情報を伝えたが、初期段階では日本側の連絡窓口との意思疎通が難しかった

  各国が日本国内の自国民を保護するため異なる措置を取った。

  事態の進展に関する情報不足などが原因、混乱と懸念を招くこともあった。

 1.子どもの甲状腺被ばく線量は低く、甲状腺がんの増加は考えにくい。

  胎児などに被ばくの影響は見られず、被ばく線量が十分低いため、今後も影響はないと予想される。

 1.避難住民の帰還に備え、インフラの再構築やその実行可能性、地域の持続的な経済活動を検討する必要がある。

 1.汚染された原子炉建屋への地下水流入を制御することが依然必要。

  汚染水問題ではすべての選択肢を検討することが必要。

  浄化設備で取り除けないトリチウムを含む水の海洋放出の影響について評価するよう東電に助言した。

 1.復興活動に関する国民との対話が信頼醸成には不可欠。

  効果的な対話のため、専門家は被災者がどんな情報を必要としているか理解し、分かりやすい情報を提供する必要がある。

 

注:下線の子どもの甲状腺がんに対する見解は問題です

  日本政府は何が何でもこの見解に沿った報告をしていることは福島県の「県民健康調査」検討委員会の報告の通りです