鉄血勤皇隊の覚書と命令書
前項で男子学徒隊を鉄血勤皇隊と称することを書きました。
鉄血勤皇隊は軍の政策として正式に作られたものです。
戦後アメリカ軍に押収された多くの資料に証拠があります。
英訳され米ワシントンの国立公文書館に保存されていた資料を
林博史氏が再度日本語に訳したものを引用します。
(季刊戦争責任資料 第54号林博史論文から)
軍の命令によってかけがえのない
中学生や高校生が強制的に動員され命を失ったのです。
●球作命 甲第110号 第32軍命令
3月3日1200(注:1945年3月3日12時)
首里
1.軍は、本方面における鉄血勤皇隊の訓練を援助し、
鉄血勤皇隊の防衛召集を準備せんとす。
2.第62師団長、国頭支隊長、軍砲兵隊長、
第19航空地区司令官は、
添付「鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書」に
定められたように、鉄血勤皇隊の訓練を援助し、
その防衛召集の準備をおこなうものとす。
3.先島集団司令官ならびに奄美守備隊長は、
添付「鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書」を基本として、
鉄血勤皇隊の訓練を援助するものとす。
4.沖縄連隊区司令官は添付
「鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書」に従い、
沖縄県における鉄血勤皇隊の編成にあたって沖縄県知事と協力し、
鉄血勤皇隊の防衛召集を準備するものとす。
5.関係者(部隊)は協力して詳細を定めるものとす。
第32軍司令官 牛島 満
*石命令 甲第25号 第62師団命令
首里 3月8日1000
1.軍は、本方面における鉄血勤皇隊の訓練を援助し、
鉄血勤皇隊の防衛召集を準備腺とす。
添付した「鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書」に従い、
沖縄連隊区司令官は鉄血勤皇隊の編成にあたって
沖縄県知事に協力し、防衛召集を準備するものとす。
2.師団は、上記「覚書」に従い、
鉄血勤皇隊の訓練を援助しその防衛召集を準備するものとす。
3.上記「覚書」に従い、
以下の部隊長は鉄血勤皇隊の訓練を援助するものとす。
第22独立歩兵大隊長 鉄血勤皇商工隊(注:那覇市立商工学校)
第23独立歩兵大隊長 鉄血勤皇開南隊(注:私市立開南中学)
師団工兵隊長 鉄血勤皇工業隊(注:県立工業学校)
4.上記任務を担当する将校は、
防衛通信隊の訓練を実施するものとす。
5.師団経理部ならびに軍医部長は、
当該各部隊長の訓練を援助するものとす。
6.訓練実施要領は双方の合意ならびに
添付の訓練に関する指示に基づいて定めるものとす。
第62師団長 藤岡 武雄
添付「鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書」
という言葉が再三出てきますが
どのような覚書なのでしょうか?
●鉄血勤皇隊の編成ならびに活用に関する覚書
球1616部隊長(注:第32軍司令官のこと)
沖縄県知事
沖縄連隊区司令官
この覚書は、沖縄県における中学校ならびに
それ以上の学校(師範学校を含む)の学徒の動員に関する
現地軍ならびに県当局との間の合意である。
他の諸島での学徒の動員は本島での動員に準じて、
現地守備隊長と現地現地県当局
(県知事によって選任された者を含む)との協議によって決定される。
方針
南西諸島は重大な戦場になることに鑑み、
中学校ならびにそれ以上の学校(師範学校を含む)の
学徒を各学校ごとに鉄血勤皇隊に編成し、
軍との密接な連携の下に軍事教練を実施し、
而して非常事態が生じた際には、
それらを直接軍組織に編入し戦闘に参加させるものとす。
要領
1.鉄血勤皇隊の編成は、沖縄県知事が
沖縄連隊区司令官の援助をうけておこなうものとす。
知事は、学校における訓練の利点を考慮するとともに、
鉄血勤皇隊の防衛召集実施に備えるものとす。
なお関連諸機関の都合により若干の遅れがありうる。
2.鉄血勤皇隊の編成が完了した時点で、
軍は訓練において学校当局を支援するものとす。
軍が訓練において支援するものは以下の通りである。
戦闘訓練(特攻訓練を含む)
陣地構築ならびに通信業務
医療応急手当
現地自活
3.非常事態が生じた場合、
球防衛召集第135号「球部隊防衛召集規則」ならびに
添付の「鉄血勤皇隊防衛召集要領」」に従って、
軍命令によって鉄血勤皇隊が防衛召集される。
軍の部隊として鉄血勤皇隊は戦闘ならびにその他の任務に配属される。
編成
1.学校長が鉄血勤皇隊を指揮する。
しかしながら防衛召集命令が発せられた後は、
学校配属将校が軍将校名簿に記載されている
学校教職員の中から隊長を指名してもよい。
また軍将校名簿に記載されていない学校長と教職員は軍属とす。
すべての該当する教職員と14歳ならびにそれ以上の
すべての学徒(通信教育を受けている者は除く)は
鉄血勤皇隊に編成される。
2.各学校での学年(学級)は鉄血勤皇隊の基礎となる。
学校はその人数に応じて、大隊、中隊、小隊、分隊に編成される。
中略
訓練
1.訓練はすべて実際の戦闘に適応したものとす。
強力なる日本軍兵士として皇土防衛の戦いに備えるものとす。
訓練は学徒たちのこれまでの学問上の知識を増進し、
兵士にとって必須である基本的な事項についての実際的訓練、
特に軍事技能を必要とする訓練を重視す。
夜間訓練もまた重視す。
以下省略