健康食品に関する国の見解 1

2015年12月に、国の食品安全委員会の

「いわゆる健康食品の検討関するワ-キンググル-プ」では

メッセ-ジを出しています。

内容は19項目のメッセ-ジと4項目のまとめです。

                      

◎いわゆる健康食品に関するメッセ-ジ   

Ⅰ.はじめに

 ・・・・今回のメッセ-ジでは、

 「健康の維持・増進に特別に役立つことを

 うたって販売されたり、そのような効果を

 期待して摂られたりしている食品」を

 「健康食品」とし、体重を減らす目的の「健康食品」や

 法令で規定されている

 保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、

 機能性表示食品)等まで幅広く対象にしました。   

Ⅱ.用語の定義     

 ・・・・ここでの、「わかっている」とは、

 科学的な方法で検討して明確にわかっていること、

 「分かっていない」とは、科学的な方法では

 明確になっていないことを意味します。

 「科学的な方法で検討して明確になっていること」とは、

 「健康食品」の有効性を例にとれば、

 動物ではなく、妥当な人数の人を対象として、

 適切な試験が行われていること、

 複数の研究機関により客観的に

 評価されている(論文の公表など)ことなどで、

 効果はあったという体験談や

 一研究者の学会発表だけでは

 「科学的に確か」とは言えません。   

Ⅲ.「健康食品」についての19のメッセ-ジ         

   注:各項目のテーマの部分と大事なところを黄色にしました。

 1.食品としての安全性についてのメッセ-ジ(A~C)

  A.「食品」でも安全とは限りません

   すべての「健康食品」について、

   通常の食品と同様に健康への

   リスクがないとは言えません。

   実際に「健康食品」によると思われる

   体調不良を経験している人がいます。 

   また、体質によってアレルギ-を起すものもあります。

  B.「食品」だからたくさん摂っても

   大丈夫と考えてはいけません

   通常の食事で摂っている「通常の食品」も、

   摂りすぎれば健康によくない影響が出ます。

   しかし、通常の食品は、

   たとえ有害な物質を含む食品であっても、 

   長年習慣としてきた方法で常識的な量を

   食べている範囲では健康被害を

   起すことはほとんどありません

   このことは長年にわたる試行錯誤の歴史を経て

   経験的にわかっているため、

   我々は通常の食品が危ないと

   感じることがないのです。

   「健康食品」も過剰に摂れば良くない影響が出ます。

   そのうえ「健康食品」の多くは、

   特定の成分の含有量を増やすなどして、

   通常の食品に増した健康増進効果を

   うたうもののため、食品として

   長年摂られて来た経験(食経験と言います)が

   乏しいものもあり、どの程度の量なら

   問題が起きないかなどわからないことが

   多いのが現状です。

   実際によく取られている「健康食品」でも

   健康被害が起きた事例が少なからずあります。

   (例:ウコンによる肝障害、キャンドルブッシュによる下痢・腹痛)

  C.同じ食品や食品成分を長く続けて

   摂った場合の安全性

   正確にはわかっていません。

   日常摂っている「通常の食品」や食品成分でも、

   同じものを長期間毎日摂り続けたときの

   安全性がわかっているものはほとんどありません

   これは「健康食品」についても同じです。

   毎日同じ「健康食品」を長く摂り続けて

   安全であるかどうかは

   わかっていないものがほとんどです。

   知見が得られている稀な事例として

   身近なビタミン・ミネラルがあります。

   例えば、β-カロテンは、がんや

   心筋梗塞などの心血管疾患の予防の

   効果があるといわれてきましたが、

   長期研究では、期待とは逆に、

   喫煙者の肺がんリスクを上げると報告されています。

 2.健康食品」としての安全性についてのメッセ-ジ(D~I)      

  D. 「健康食品」として販売されているからといって

   安全ということではありません。       

   健康に良いと思われている「健康食品」も

   食品の一つで、安全性や有効性の評価は

   されていないものがほとんとです。

    また、長年摂られて来た経験(食経験)が

   少ないものもあります。

   「健康食品」の中には、

   有害な成分を含んでいるなどして

   健康被害を起こす例もみられます。

   店頭で販売されているからといって

   安全とは限りません。

   また、多くの人には安全であっても、

   一部の人には健康被害を起こす場合があります。

(例:肝臓疾患がある人でのウコンによる肝障害)

  E.「天然」「自然」「ナチュラルなどのうたい文句は

   「安全」を連想させますが、科学的には

   「安全」を意味するものではありません

   「天然なので安心」といったうたい文句で

   販売されている食品がありますが、 

   人工的につくられたものに比べ

   天然由来の食品の方がより安全とはいえまえん。 

   そもそも天然の毒もたくさんあります。 

   また、「健康食品」に用いられている植物について、

   適切な原材料管理がされておらず

   重金属が過剰に含有されていた例や、 

   よく似てはいるが別の植物が使われて、

   表示と異なる成分が含まれていた例があります。     

  F.「健康食品」として販売されている

   「無承認無許可医薬品」に注意してください。      

   「健康食品」として販売されているものの中には

   医薬品成分やそれに似た成分を 

   違法に添加しいるものがあります。

   これらは無承認無許可医薬品」と言われ、

   行政による取り締まりの対象になりますが、 

   一見「健康食品」のように

   販売されていることがあるため、 

   知らずに摂った人が健康障害を起す

   事例も発生しています。      

  G.通常の食品と異なる形態の

   「健康食品」に注意してください。        

   通常の食品として摂る場合には、

   摂れる量に自ずと限度があります。 

   しかし、末にした形態、特定成分を抽出

   あるいは濃縮してカプセルや

   錠剤にした形態(サプリメント)では、 

   特定の成分を多量に摂ることも容易ですので、

   特に注意が必要です。

   健康に良いのだからたくさん摂れば

   もっと良い効果が得られるだろうと、 

   今までの食経験を超えた量を超えた量を

   摂る過剰摂取の事例が見られます。      

  H.ビタミンやミネラルのサプリメントによる

   過剰摂取のリスクに注意してください。        

   ビタミンやミネラル(微量栄養素と言います)の

   サプリメントも色々と販売されていますが、

   現在の日本人が通常の食事をしていて

   欠乏症を起こすビタミンやミネラルはありません

   つまり、通常の食事をしている限り、

   ビタミンやミネラルを食事以外から

   サプリメントによって摂る必要性を示す

   デ-タ-は今のところありません。 

   「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会報告書」では、

   ビタミンやミネラルの「過剰摂取の回避」について、 

   通常の一般的な食品を摂ることによって

   過剰症が起こることはないとしています。 

   しかし、特にサプリメントからの

   過剰摂取を防止するため、

   「耐容上限量が設けられています。

   特に必要量と過剰量の差が少ないセレンや

   鉄などの微量ミネラル、ビタミンA、

   ビタミンDなどの体内に蓄積しやすい

   脂溶性ビタミンなどは

   過剰にならないように注意が必要です。 

   厚生労働省による国民健康・栄養調査における

   「栄養素摂取量」と

   「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に

   示されている「推定平均必要量」を、

   性・年齢層別に比較した場合、

   カルシウムや鉄など一部のミネラルや

   ビタミンにおいては、摂取不足が

   懸念される人が相当数存在するように見えます。 

   しかし、栄養素の必要量には

   個人差があることや、 

   自分で食事からの栄養素の摂取量を

   知ることも難しいので、

   個人が自己判断でサプリメントから

   ミネラルを大量に補給することは

   過剰摂取につながる可能性があります。

   サプリメントからミネラルやビタミンを

   補給する場合は、

   これらに対する知識を有する専門家

   (医師、薬剤師、管理栄養士、アドバイザリ-スタッフ等)の

   アドバイスを受けるなど、注意深く、

   必要性を判断してください。

   ちなみに、以前の研究では、先進国では、

   ミネラルやビタミンの補給が

   有用だという結果が出ていましたが、 

   最近十数年間に実施された同様の研究では、

   先進国では結果が得られにくくなっています。 

   これは、食糧が十分に供給されているため、 

   よほどの偏食をしない限り

   ビタミンやミネラルの欠乏状態

   起きないからだと考えられています。

   個々の食生活の違いにより、

   食事以外からもビタミンやミネラルを

   摂る必要があるかどうかが変わります。

  I.「健康食品」は、医薬品並みの品質管理が

   なされているものではありません。 

   錠剤やカプセル形態のものは外見上

   医薬品と誤認されることが多いようです。 

   しかし、箱やビンな中の個々の錠剤や

   カプセルが医薬品と同じようでも、 

   成分が一定量に調整されていない

   製品がある可能性があります。 

   また、消化管の中で確実に溶けて、

   吸収されるように作られていないと

   思われる製品があったり、 

   不純物(重金属など)が多量に含まれている

   製品があるなど、

   製造管理に問題がある事例があります。 

   「健康食品」の製造管理は、医薬品と違って

   品質管理が法の規制の対象にならず、

   製造者の自主性に任せられている

   ことにご留意ください。 

   錠剤・カプセル形態の「健康食品」には、

   現在、事業者が自主的にGMPなど 

   品質管理を行うことが推奨されています。 

   製品についているGMPマークは、

   品質を判断する上で参考にすることができます。   

     注:GMPとは適正製造規範のこと