戦争に関する国際法
南京事件を否定する人は
「民間人や捕虜は殺害していない。
殺害したのは便衣兵だ。
国際法でゲリラの殺害は認められている」と
主張しています。
そこで国際法を見てみます。
本来、戦争はあってはならない事ですから、
戦争のやり方に関する国際法があることは変な話です。
しかし過去においては国際紛争における
武力解決、つまり戦争が認められていたのです。
そこで戦争は仕方がないが、
やって良いことといけないことをルールとして
国際的に決めておこうと作られたのがハ-グ条約です。
ハーグ条約とは、1899年(明治32年)と
1907年(明治40年)の2回ハ-グ国際平和会議で
採択された条約の総称です。
陸戦条約(陸戦の法規及び慣例に関する条約)、
紛争海戦条約、
国際紛争平和的処理条約・・・等を含みます。
日本は1911年(明治44年)批准し
翌年公布されています。
その中の陸戦条約に
捕虜は保護しなければいけないが、
自然発生のゲリラに付いては
何も書いてないので、ゲリラを殺害しても
国際法違反ではないと主張する人達がいます。
いわゆる南京虐殺を正当化する意見です。
それでは実際にハーグ条約に
どのように書いてあるのかを見てみます。
注:私の手元にある資料は1899年版なので、
その内容を主とします。
但し第二条は1907年度版で修正されています。
読者から指摘されましたので、
第二条のみ1907年版の内容です。
陸戦の法規慣例に関する条約の細かい点は
付属書の規則に書かれています。
● 「陸戦の法規慣例に関する規則」 抜粋です。(原文カナ)
前文
・・・・一層完備したる戦争法規に関する
法典の制定せらるるに至るまでは、
締約国は、その採用したる条規に
含まさる場合においても、
人民及び交戦者の文明国の間に存立する慣習、
人道の法規及び公共良心の要求より生ずる
国際法の原則の保護及び支配のもとに立つことを
確認するをもって適当と認とむ・・・・
締約国は、採用せられたる規則の
第一条及び第二条は、
特に右の趣旨をもって解すべきものとなることを宣言す
注:この前文は、
条約が内容的に不充分との意見があり、
調整するためにロシア代表のマルテンスから
提案されたとのことです。
そのため拘束は難しくなかなか
守られなかったようです。
第一款 公戦者
第一章 交戦者の資格
第1条[民兵と義勇兵]
戦闘の法規及び権利義務は
独りこれを軍に適用するのみならず
次の条件を具する所の
民兵及義勇兵団にもまたこれを適用す
注:ゲリラのことでしょう
第一
部下の為に責任を負う者その頭にあること
第二
遠方より看別し得べき固著の徽章を有すること
第三
公然と武器を携帯すること
第四
その動作に於いて戦闘の法規慣例を尊守こと
民兵又は義勇兵団をもって
軍の全部又は一部を組織する国においては
之を軍の名目中に包含す
第2条[群民兵]
いまだ占領せらざる地方の
人民にして敵の接近するに方り
第一条によりて編成するの逞なく
侵入軍隊に抗敵する為
自から然武器を操る者が
公然と武器を携帯し、
かつ戦闘の法規慣例を遵守する者は
交戦者と看做すべし
注:自然発生のゲリラにも適用すること
第3条[兵力の構成員]
交戦国の兵力は戦闘員及び
非戦闘員を以て之を編成することを得
敵に捕獲せられたる場合には
二者均しく俘虜の取扱を受ける権利を有す
注:この規則のどこにゲリラ
(民兵、義勇兵、群民兵)を殺して良いと
書いてあるのでしょうか?
逆に非戦闘員を含め俘虜として
人道的に処遇する事を定めているのです。
第二章 俘虜
第4条[俘虜]
俘虜は敵の政府の権内に属し、
これを捕らえたる個人又は軍団の
権内に属することなし
俘虜は人道をもって取り扱わるべし
俘虜の一身に属するものは、
兵器、馬匹及び軍用書類を除くの外、
依然その所有たるべし
注:捕虜をこちらの流儀で
勝手に扱ってはいけない・・・・
私的持ち物を取ってはいけないということです
第7条[給食]
政府(注:この場合日本政府)は、
その権内にある捕虜を給養すべき義務を有す
交戦者間に特別の協定なき場合においては、
俘虜は糧食、寝具及び被服に関し
これを捕らえたる政府の軍隊と
対等の取扱を受くべし
注:捕虜を糧食、寝具及び被服の面で
自国の軍隊と対等に扱えと言う事です
第二款 戦闘
第一章 害敵手段、攻囲及砲撃
第22条[害敵手段の制限]
交戦者は、害敵手段の選択につき、
無制限の権利を有するものに非ず
注:敵だから、又勝ったからといって
何をやっても良いと言うのではない
第23条[禁止事項]
特別の条約をもって定めたる禁止の外、
特に禁止するものは以下の如し
イ. 毒又は毒を施したる兵器を使用すること
ロ. 敵国又は敵軍に属するものを
背信の行為をもって殺傷すること
ハ. 兵器を捨て又は自衛の手段尽きて
降を乞える敵を殺傷すること
注:イ:毒ガス、細菌禁止ですし・・・
ロ:許すと騙して殺してもいけない・・・・
ハ:兵器を捨てた敗残兵は殺していけないと言う事です。
日本軍は総てに違反しました。
第25条[防守されない都市の攻撃]
防守せざる都市、村落、住宅又は建物は、
如何なる手段によるも、
これを攻撃又は砲撃することを得ず
注:無防備都市を攻撃してはいけないと言う事です。
日本の南京・重慶爆撃も違反、
アメリカの空襲も原爆も違反、
イラク攻撃も違反です。
第三款 敵国の領土に於ける軍の権力
第43条[占領地の法律の尊重]
国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、
占領者は絶対的の支障なき限り、
占領地の現行法律を尊重して、
なるべく公共の秩序を回復確保する為
施し得べき一切の手段を尽くすべし
第46条[私権の尊重]
家の名誉及び権利、個人の生命、
私有財産並びに宗教の信仰及び遵行は、
之を尊重すべし。
私有財産は、これを没収することを得ず。
第47条[掠奪の禁止]
掠奪は、之を禁止す。
第52条[徴発と課役]
現品徴発及び課役は、
占領軍の需要の為にするに非ざれば、
市区町村又は住民に対して
之を要求することを得ず。(中略)
上記徴発及び課役は、占領地方における
指揮官の許可を得るに非ざれば、
之を要求することを得ず。
現品の供給に対しては、
なるべく即金にて支払い、
然らざれば領収書を以てこれを証明すべく、
かつなるべく速やかに之に対する
金額の支払を履行すべきものとす
注:日本軍で日常的に行われた徴発と
荷役は指揮官の許可がないので違法です。
さらに大部分お金を払っていないのでさらに違法です。
以上抜粋して要点だけ書きました。