国境なき記者団の沖縄に関する声明
2016年10月下旬、
沖縄・辺野古への基地移転、
高江のヘリパッド等の取材で
懸念を感じた「国境なき記者団」は
沖縄の「報道の自由」関して声明を発表しました。
在日米軍や日本政府が市民やNGOへの弾圧、
ジャ-ナリストを監視していることへの抗議です。
沖縄タイムス2016年10月23日記事より転載します。
● 声明文
国境なき記者団は、在沖米軍が
日本の市民、NGO、ジャ-ナリストを
広範囲に監視していることについて、
米軍と日本政府に説明を求める。
監視活動は英国人ジャ-ナリスト、
ジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した
305ペ-ジの文書で明らかになった。
今年5~7月の在沖米海兵隊捜査当局による
監視活動の日報、幹部が出した電子メ-ル、
ある基地の憲兵隊が回覧した報告書が含まれる。
6月9日付の日報には、
ミッチェル氏が米軍の環境汚染について講演したことが、
写真や短いプロフィ-ル付で記述されている。
ある電子メ-ルはミッチェル氏を「敵対的」
「協力関係を築く見込みがない。
彼には方針があり、それを隠そうとしない」と表現している。
沖縄の2つの日刊紙、
沖縄タイムスと琉球新報についても
日報で言及されている。
米軍がミッチェル氏を監視するのは、
沖縄における軍事活動、環境汚染、
冷戦中の化学兵器投棄などを報じてきた結果だという。
地元の平和運動、米軍基地や日本政府の政策への
抗議行動も取材しており、
ミッチェル氏はこれも監視下に
置かれた理由になったと考えている。
国境なき記者団アジア太平洋事務所の
ベンジャミン・イズマイル所長は
「ミッチェル氏が入手した文書は、
米軍が彼の日本における全ての行動を
注意深く監視していることを明確に示しており、
非常に懸念を抱く。
文書に照らし、
米軍はこの監視活動の決定を説明すべきだ。
在日米軍による監視活動は、
報道の自由を保障する日本政府の責務を脅かしている。
日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを
明確にする必要がある」と述べた。
国境なき記者団は在沖米海兵隊が
監視活動を説明すべきだと信じ、
連絡したが返事がなかった。
ミッチェル氏は米国防総省に監視活動の程度や、
どのレベルで許可されたのかを照会したが拒否された。
国境なき記者団はテストを実施し、
ミッチェル氏の自宅のIPアドレスが
インタ-ネット接続遮断の標的に
なっていることを突き止めた。
嘉手納基地を含むいくつかの米軍ウェブサイトを
閲覧することができなくなっている。
沖縄での抗議活動の取材に関連して、
標的にされたジャ-ナリストは
ミッチェル氏だけではない。
8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に
対する抗議活動を取材していた
沖縄タイムスと琉球新報の記者を、
機動隊員が拘束した。
記者であることを警察に表明したにもかかわらず、
現場から連れ去られた。
両紙やマスメディアも労働組合は
「国による報道の自由の深刻な侵害だ」と非難した。
しかし、安倍晋三首相が率いる政府は
警察のこうした行動を容認し、
将来抗議行動を取材するジャ-ナリストにとって
危険な先例を作った。
与党自民党のメンバ-は昨年、
政府に批判的なメディアには
財政的圧力を加えるべきだと言い、
公共放送NHKの前経営委員長は
沖縄タイムスと琉球新報がつぶれるべきだと発言した。
国境なき記者団は国連の
表現の自由に関する特別報告者、
デイビッド・ケイ氏が4月に日本政府を訪問する直前、
日本における報道の自由を巡る状況が
深刻だとの評価を発表した。
安倍氏が2012年12月に
再び首相に就任して以来、
報道の自由への配慮は大幅に後退している。
16年の報道の自由度ランキングでは
日本は180ケ国中72位で、
ランキングが02年に創設されて以来、
過去最悪となった。